低用量ピルで「心の怪獣」退治 更年期を乗り越える

日経ARIA

2020/2/29
更年期の症状が「つらい」ことを言葉にして伝えてみる(イラストはイメージ=PIXTA)
更年期の症状が「つらい」ことを言葉にして伝えてみる(イラストはイメージ=PIXTA)
日経ARIA

結婚、流産、失職、離婚、再婚、2拠点生活、更年期……人生の山谷を数多く経験してきた酒ジャーナリスト・エッセイストの葉石かおりさん(53歳)。低用量ピルに出合ったおかげで更年期のつらい時期を乗り越え、東京と京都の2拠点で過ごすデュアルライフが快適に過ごせるようになったそう。葉石さんが振り返ります。

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突然、顔から滴り落ちる滝のような汗。

取材用の白いノートが、たちまち汗で水玉模様に変わっていく。真夏でもないのに、そして熱があるわけでもないのに、首から上が燃えるように熱く、止めようにも汗が止まらない。自分であせるほど、人から心配されるほど、顔から汗が噴き出て、その場で卒倒しそうになった。

これが更年期との闘いの始まりでした。まだ30代半ば。いわゆる若年性更年期障害で明らかにホットフラッシュの症状ですが、このときは「まさか自分が」と軽く見ていました。しかし、軽視できないほど、その症状は繰り返し起こり、悪化の一途をたどっていったのです。取材や講演時にホットフラッシュが急に起こり、どんどん頻度が高くなっていきました。

いつ起こるとも知れないホットフラッシュを心配して、真冬でもジャケットの下は常にノースリーブ。温度調整できるように気を付けていましたが、それでも対応できないほどに症状は悪化し、さらにはメンタルにまで影響が出るようになっていきました。

額に血管が浮きそうな激しい怒りを夫にぶつけた

感情の起伏が激しくなり、ちょっとしたことでイライラ。それもただのイライラではなく、額に血管が浮きそうなほどの激しい怒りの感情で心がいっぱいになってしまうのです。感情のぶつけ先は一番近い身内である夫。今思うと、これも前夫との離婚原因の一つだったのかもしれません。こんな状態では仕事での人間関係もうまくいくはずがなく、感情に任せた物言いのせいで仕事は激減。揚げ句の果てには長く籍を置いていた出版社の上司とけんかして、いきなりクビになるという失態をやらかしてしまいました。

感情をぶつけることは「いけない」と分かっていても、自分でもどうにもコントロールできない。まるで心の中に「暴れまわる猛獣」を飼っているかのようでした。

東京と京都の2拠点生活をする現在の夫とも、つきあい初めはけんかが絶えませんでした。その原因は間違いなく、瞬時に爆発する感情をそのまま投げていたから。今のように離れて暮らしていることがメリットではなく、スカイプやメールでは感情の行き違いからミスコミュニケーションを連発。幾度となく別れ話が出ました。それはもう数えきれないほど。今だから言えますが、自分自身をコントロールできず、「死にたい」とさえ思ったこともあります。こんなひどい状態を42歳まで放置していたというのだから、自分でもあきれてしまいますよね。

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「地獄」から救ってくれた低用量ピルとの出合い