アウトドアの機能を日常に ノースフェイスの本物志向ノースフェイスの魅力を探る(下)

都会生活の中で使ってもらうことを意識

――アウトドア衣料といえば目立つ色のものが多いのですが、こちらのお店に並ぶ商品は白、黒、グレー、アースカラーが中心です。

高梨「本来のアウトドア活動の場では視認性が重要になるので、どうしてもビビッドカラーを使うことが多くなります。ただ、この店で扱う商品は旅行や都市生活のなかで使っていただくものが多いので、ニュートラルカラーが目立つのです」

ビジネスシーンに違和感ないデザインに仕上げたシャトルデイパック(1万9800円)

石津「店づくりもシンプルですよね。この売り場なんて『金をかけていません』というのが前面に出ていて、そこがなんともアウトドアらしい。普通よその店は、どうだ、金がかかっているだろう、というのを主張するのに」

高梨「おっしゃる通りです。こちらのコンセプトは、スタンダード・オブ・リビング・パッケージといって、身の回りにある何でもない素材を使ってお店をつくろうというものです。ここで使っている素材はベニヤとコンクリートと鉄だけです。それがたとえば『ザ・ノース・フェイス プレイ』(東京都千代田区)ではじゅう器はナラ材、床は御影石と重厚です。ノースフェイスの店舗は90店近くになりましたが、それぞれの店が個性的で、店づくりも、MD(商品政策)も、ひとつとして同じ店はありません。非効率ともいえますが、その場所にあった店をつくるからこそ、支持されていると思っています」

――最近、スポーツウエアを日常に取り入れたファッション、アスレジャー(アスレチックとレジャーの造語)の人気が世界的に高まっています。アウトドアはアスレジャーの分野に含まれないのですか。

高梨「アスレチックは僕らの定義としてはスポーツブランド、ナイキ、アディダス、プーマといったブランドを指します。たとえば代表的なアスレジャースタイルとして、ぴったりしたレギンスをそのまま街ではくのが浸透していますが、我々にはそうしたアイテムはありません。スポーツウエアを日常に取り込むという感覚は近いのですが」

石津「アウトドアは競技ではない。釣りやハンティングや山登りといった、生活の中に入り込んでいるスポーツのことなんです。僕は長年、フライフィッシングをやっています。もともとはフィッシングベストとか、着る物、スタイルにあこがれて始めたのだけどね」

高梨「私も、フライフィッシングをする副社長の渡辺貴生(4月から社長に就任)から手ほどきを受けて、何度か行くようになりました」

石津「スポーツやアウトドアをやるなら現場を知っていること。何よりも大切ですよね」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

石津祥介
服飾評論家。1935年岡山市生まれ。明治大学文学部中退、桑沢デザイン研究所卒。婦人画報社「メンズクラブ」編集部を経て、60年ヴァンヂャケット入社、主に企画・宣伝部と役員兼務。石津事務所代表として、アパレルブランディングや、衣・食・住に伴う企画ディレクション業務を行う。VAN創業者、石津謙介氏の長男。

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