『その他の人に会ってみた』 王道捨てた生き様映す
アンケート調査などで目にする"その他"の項目。TBSの『その他の人に会ってみた』は、その少数派に着目し、手堅い選択をしなかった人たちを"その他さん"と呼んで、生き様にフォーカスする調査バラエティーだ。
番組が立ち上がった経緯について、総合演出の青木章浩氏は、打ち合わせ中に放送作家から見せてもらった「東京大学卒業者の進路」を示した円グラフがきっかけになったと話す。「約50%が大学院進学で、これも衝撃ではあったんですが、次に就職、公務員などと続いて、最後の数%に"その他"とあるわけです。東大を卒業したのに、『何をやってるんだろう』と盛り上がって。それで企画書を作って、18年の12月に特番として放送しました」(青木氏、以下同)。
そのときは、東大卒業後に忍者になった人のほかに、宝塚歌劇団退団後に政治家になった天海祐希の同期や、元力士という"その他"な経歴を持つメンバーがいる純烈を取り上げた。この放送が好評を得て、19年3月の2度目の特番の後、4月からレギュラー化した。
フックとなる円グラフは、すでに資料として世の中に出ているものを使用する場合もあれば、取材を基に、番組で独自に作るときもある。最近では、美容やファッションなどのキラキラ写真ではない「インスタグラマーのその他さん」や、98%以上が観光目的というなかでの「十和田湖に訪れたその他さん」などを取り上げた。「あなたのその他な部分」を聞く街頭インタビューも定番企画だ。
取り上げたい人をリサーチしてから取材に行くときは、会って初めて発見できた面白さをキャッチするようにしているという。また、ロケでアンケートを取るときは、「聞いたことのない話が聞けるまでは取材を続けるのが基本です。VTRのキモにもなるので」。毎回350人程度にアンケートを取っており、サンプル数の多さに驚くが、「ユニークな話を聞けるまでとなると、自然とそのくらいにはなってしまう。でも楽しみながらやっています」とのこと。
MCは東野幸治が務める。VTRを見ながらツッコミを入れて笑いを起こすことにたけ、一般の人を傷つけないいじり方ができるため、助けられる部分が大きいという。「あと、東野さんはとにかく物知り。東野さんを驚かせたくて、ネタ探しも燃えます(笑)」
ユニークな一般の人を取り上げる番組は数多くあるが、「普通に進めば安定した成功があったのに、"あえて王道を外れて"という目線があることで、差別化できていると思います」。いろいろな人生があっていい、という前向きな内容でもあり、ゴールデンタイムでのレギュラー化を目指している。
(日経エンタテインメント!2月号の記事を再構成 文/内藤悦子)
[日経MJ2020年2月14日付]
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