自治体で「香害」対応進む 成分開示や基準求める声

宮田幹夫・北里大学名誉教授「公共の場から規制を」

――化学物質過敏症の患者にはどのような傾向がありますか。

宮田幹夫・北里大学名誉教授

「おおむね男性3に対して女性7と女性の方が多いです。住居は様々な化学物質に接する機会が多い一方、オフィスに比べて空調が行き届かない問題があります。女性の方が住居にいる時間が長いというのが原因の1つでしょう。また女性の方が男性に比べてにおいを記憶する脳の機能が強いことも原因と考えられます。記憶の作用により特定の化学物質への反応を強めてしまうという経路です」

「学校で子どもが発症する問題も深刻です。子どもは口や鼻など呼吸器の位置が低い場所にあるため、空気の中で比重が大きい化学物質に接しやすくなります。さらに内臓による解毒能力も弱い。化学物質に過敏なお子さんがいる部屋や教室は、換気をこまめにするなどの対策が必要です」

――どのくらいの規模の患者がいるのでしょうか。

「12年当時の内山巌雄・京大名誉教授らの調査では人口の約1%が化学物質過敏症と診断されたことがあるという結果が出ました。一方、早くから過敏症への理解や研究が進んだ米国では成人の6%程度が該当するという調査結果もあります。線引きは難しいですが、患者だけでなく化学物質への感受性の高い人も含めると人口の6~7%に相当するとみています」

――反応を引き起こす化学物質は特定できているのですか。

「ホルムアルデヒドのように規制が設けられた物質もありますが、人工香料については特定できていません。化学物質の数が膨大で、患者の反応も人によってまちまちだからです。1日に世界中で新たに合成される化学物質は300種類ともいわれ、現在7千万~8千万種の物質が存在しているとみられます。いったん過敏症になった人はさまざまな物質に反応しやすくなるなど症状のカテゴリー分けも難しいのです」

――医療の機会が乏しいという問題をどう考えますか。

「化学物質過敏症には、誰にでも効く特効薬はありません。薬の処方が少ないということは医師にとって収益になりにくいということです。化学物質過敏症は(09年から)保険診療の対象となってはいますが、医師が保険診療だけで専門クリニックを運営することは経済的に難しいでしょう。そうすると患者の自費診療ということになりますが、患者は過敏症のせいで仕事を辞め、転居せざるをえないなど経済的に苦しい場合が多くあります。医師の教育の過程で過敏症への理解が進み、少しでも多くの専門医が生まれることも望みます」

――化学物質に成分表示や使用基準を設ける必要があるとの意見もあります。

「たしかに空気を汚している物質の使用に基準を設けることは必要でしょう。ただしこれだけ多くの化学物質が生まれている現状から考えると、環境問題のように対策がモグラたたきとなる恐れもあります。ある化学物質を規制しても、異なる物質はすぐに生み出されるでしょう」

――どのような対策が有効でしょうか。

「人々が良いにおいを求めることで、空気を汚してしまっていることも知ってほしいと思います。たばこの害が知られることで公共空間が禁煙となっていったように、まず学校や病院、介護などの公共施設では強い人工香料の使用を控えるようにしてほしいと思います。それだけでも大きな違いです」

(高橋元気)

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