自治体で「香害」対応進む 成分開示や基準求める声

柔軟剤などのにおいは生活のニーズと関係しています。マーケティングを研究する一橋大の松井剛教授は「加齢臭といった言葉が広がるのにしたがい、人々が自分のにおいを気にするようになった」と指摘します。自分のにおいを隠すための良い香りが相手を傷つける場合もあります。化学物質過敏症を30年にわたり研究する北里大学の宮田幹夫名誉教授は「せめて学校や病院など公共施設では強い人工香料を控えてほしい」と話しています。

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人工香料に反応する化学物質過敏症はどんな病気なのでしょうか。患者や家族が集まる任意団体「CS憩いの仲間」の青山和子代表と、そよ風クリニック(東京・杉並)院長で、約30年にわたり過敏症を診断している北里大学の宮田幹夫名誉教授に話を聞きました。

青山和子・「CS憩いの仲間」代表「症状は『十人千色』」

――どのように発症したのですか。

青山和子・「CS憩いの仲間」代表

「01年に新築住宅に入居したのをきっかけに、頭痛やせきが止まらないようになりました。目がちかちかして涙も止まりませんでした。私の場合は幸いにして早めに化学物質過敏症の専門医の診断を受けることができました。(建築基準法で規制対象となった)ホルムアルデヒドが原因の1つとわかってからは、解毒剤を飲んだり点滴したりするなどの治療を受けました。住宅洗剤から野菜に含まれる農薬まで様々な化学物質に体が反応してしまいます。何を食べたらいいのか、何を使ったらいいのか、わからない時期が続きました。同じ場所に暮らし、同じ物を食べても家族は反応しませんでしたから、周囲の理解を得るのも大変でした」

「農薬や肥料を使わない野菜や天然原料のせっけんなどを使うことで少しずつ反応を避けられるようになりましたが、今も不慣れな場所で洗濯の柔軟剤や住居の芳香剤に接すると体調を崩してしまいます。患者が集まって症状について話し合うと、それぞれ別々の香料に反応し、症状もバラバラであることがわかりました。化学物質過敏症の症状は十人十色ではなく『十人千色』といえるほど個人差が大きいと思います」

――政府やメーカーにはどのような対応を求めますか。

「柔軟剤などに含まれる人工香料については個別の成分をすべて開示してほしいです。そうすれば患者はリスクを避けることができますし、開示できないような物質は使わないでほしいとも思います。特定の化学物質に反応してしまう人は一握りかもしれません。しかし多くの患者の経験をたどると、同じものを使い続けることによる蓄積で発症したり、健康だった人が突然発症したりするケースもあります。過敏症が決して少数の人の病気だとは思いません。インターネットなどでも『隣の席の人の香料が強すぎる』といった声は多く上がっています。健康な人からの声が大きくなることで化学物質の使用が減ることを期待しています」

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宮田幹夫・北里大学名誉教授「公共の場から規制を」
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