花粉の季節はかゆくなる前に点眼薬 目を守る基本のキ

三村准教授らはPM2.5の濃度が高まるとアレルギー性結膜炎患者が多くなることを確認した(グラフ参照)。「PM2.5に含まれる硫酸塩や硝酸塩などの物質が目の結膜や角膜の上皮にはりつき、直接炎症を起こす。PM2.5は風が強く湿度が低い日に増える傾向がある。偏西風が強くなると黄砂もPM2.5も増える」(三村准教授)

2012年に東京都練馬区の眼科クリニックを来院したアレルギー性結膜炎の外来患者数と大気中PM2.5の浮遊濃度の関係を調べた。5月から7月の時期、アレルギー結膜炎の患者数は、PM2.5の濃度と相関した。 (データ:Sci Total Environ. 2014 Jul 15;487:493-9.)

さらに黄砂には、PM2.5だけでなく、真菌(カビ)やグラム陽性菌といった菌類、植物性のたんぱく質などもくっついている。「これら黄砂に含まれる物質が、総合的にアレルギー反応を強くすることもヒト対象の研究で確認した[注1]。私たちが行った動物の実験では、スギ単独よりも、スギと黄砂を目に与えた群で目をこする様子が多くなり、一部のマウスでは眼球破裂をきたすほどアレルギー症状が強くなった」(三村准教授)という。

雨上がり後や、交通量が多い地域に暮らす人もしっかり対策を講じたい。花粉が大気汚染物質を含む雨と合わさることでも、化学反応が起きて花粉が破裂し、抗原が飛び散るからだ[注2]。また、「地上に舞い降りた花粉が自動車に踏まれたり、ガソリン車に含まれる揮発性ガスと合わさったりすることでも花粉は破裂する。郊外よりも都市部の花粉症患者が多いのは、大気の汚れが花粉の破裂を促すから」と三村准教授は指摘する。

日本の眼科vol88(3):13-25,2017
PM2.5とは、浮遊する粉じんのうち粒の直径が2.5μm(マイクロメートル)(1μm=1mmの千分の1)以下のものを指す。石炭燃焼や自動車の排ガスに由来するため、工業地帯や自動車台数の多い大都市で高値を示す。日本では秋冬から春にかけて濃度が高くなる。花粉はそれよりもサイズが大きく、黄砂はさらに大きい。「黄砂は大小様々だが、上空で飛来するうちにサイズが小さくなり、日本に降りてくるときには7~10μmのサイズになる」(三村准教授)。黄砂の主成分、SiO2(二酸化ケイ素)にもアレルギー症状を悪化させる働きが。火山灰は最も大きい粒子だが、「結膜にはりつくと取り除く際に出血するなど、痛みが強い」(三村准教授)

[注1]Environ Res. 2014 Jul;132:220-5.

[注2]Int. J. Sus. Dev. Plann., Vol. 9, No. 1 (2014) 42-53

ドライアイやアトピー性皮膚炎の人は要注意

日ごろからドライアイ症状がある人や、コンタクトを装用している人もアレルギーリスクが高い。「ドライアイになると、涙の分泌量が少なくなったり、蒸発しやすい質の涙になったりして、バリア機能が弱くなり、抗原が侵入しやすい状態になる。傷ついた角膜上皮から炎症物質が出て、充血も強くなる傾向がある」(三村准教授)からだ。角膜に傷がつくと、まぶたの裏側に「巨大乳頭」というこぶができ、このこぶによって瞬きのたびに角膜がこすれ、傷が入ることもある。

コンタクトレンズ装用によって発症した「巨大乳頭結膜炎」(左)と、傷ついて「角膜上皮びらん」を起こした症例(写真提供/三村准教授)

「ドライアイの人やソフトコンタクトをしている人は、角膜がこすれる刺激を受けやすく、アレルギー発症時に巨大乳頭ができるリスクが高い」と三村准教授。ソフトコンタクトはハードコンタクトよりもサイズが大きめのため、瞬きのたびにエッジがまぶたの裏でこすれ、こぶができやすい。特に、2週間、1年といった装用期間が長いタイプのものは、洗い流しきれなかったたんぱく質によっても炎症が悪化する可能性があるという。

「アレルギー症状が起こる時期はメガネにするか、ワンデイの使い捨てタイプに切り替えることを薦める。巨大乳頭結膜炎を起こした場合、直ちにコンタクト装用をやめて点眼治療をすると2~3カ月で回復する」(三村准教授)。

アトピー性皮膚炎の人も目の症状が悪化しやすい。「皮膚も結膜も角膜も、バリア機能が弱いために抗原が入りやすい。花粉の時期は、早めの対策が重要」(三村准教授)という。

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