お酒にも合う 定番スイーツ、キャラメルの意外な変身
「キャラメル」といって思い起こすのは、四角く甘いキャンデーや、プリンにかかったほろ苦いキャラメルソース――。1月25日、東京・自由が丘にオープンした「CARAMELIFE(キャラメライフ)」は、そんな定番スイーツとしての顔を一変させるキャラメル専門店。これまでにないキャラメルの楽しみ方を提案する。
販売するのは18種類の瓶詰めキャラメルペーストのみ。生クリームを加えてソースのように滑らかな「ベーシック」と、バターを加えたペースト状の「バター」の2つの基本タイプがあり、それぞれ焼き加減違いとして、スイートからエクストラビターまでの5段階をそろえる。さらに、ドライフルーツやスパイスを合わせたユニークなタイプもラインアップ。
同店を経営するCARAMELIFE社長の小西篤雄さんは、これまで業務用の食品開発に携わってきた。キャラメルはその中の一つ。「キャラメルを使ったお菓子は様々なメーカーやパティシエの方が作っていますが、ペースト状のキャラメルそのものの専門店はこれまでなかった」と話す。
街では、キャラメルソースをかけたスイーツなどをよく見るが、水あめにキャラメルのフレーバーを合わせただけというものも多い。ある米大手菓子メーカーの人気キャラメルシロップも、こうしたタイプだという。そうした市場に「本物」で勝負したいと打って出たわけだ。
キャラメルソース作りというと、あめ色に煮詰めた砂糖に生クリームを入れ合わせるという作業を思い浮かべる。ところが、小西さんは、砂糖とクリームを混ぜただけでは、うちのキャラメルの味は出せないという。「砂糖とクリームなどを合わせて煮込んでいくなかで、釜の中で全体が均一に焼けてしまうと、味に深みが出ないんです。生っぽいところもあれば、焼けたところもある。そうした微妙な焼き加減があって、初めて深みのある味わいになるんですよ」(小西さん)。
ちなみに、小西さんからすると砂糖を「あめ色に煮詰める」というのは不正解。おいしいキャラメルを作るためには、色は均一ではなく「あめ色や琥珀色などに煮詰める」のが正解らしい。
キャラメル作りに使用する釜は、熱の伝わり方などを考え、その素材にもこだわる。スイート、マイルド、ミディアム、ビター、エクストラビターと、微妙な砂糖の焼き加減を5段階で作り分けられるのも、長年の経験がなせる技。なにしろ、小西さんは毎日工場に出向き、スタッフと共にキャラメル作りを手掛けているのだ。
同店では、キャラメルの様々な食べ方について、食品ごとに細かく提案している。パンならば、バターたっぷりのクロワッサンにはソース状の「ベーシック」、食パンにはしっかりとしたペーストタイプの「バター」やフランス産の塩を加えた「ソルト」が合うといった具合。クロワッサンには甘味があるので、特にビターや酸味のあるキャラメルがお薦めという。
フルーツとの合わせ方を伝授してくれたのは、CARAMELIFE取締役の小畠孝広さん。「キツネ色になった砂糖からは、有機酸が発生します。それがうま味につながるのですが、フルーツもクエン酸などの有機酸を含んでいるので相性がいいんです」。砂糖を浅焼きしたものから、しっかりと苦味を出したものまでキャラメルには味のバリエーションがあるため、酸味が強いフルーツには甘いソース、甘いものには少しビターなものをなどと、それぞれのフルーツに合った組み合わせを考えるのも楽しみとなりそうだ。
スパイスを合わせたラインアップには、先の「ソルト」のほか「ジンジャー」「スペキュロス」(シナモンなど7種のスパイスを合わせたもの)があり、店舗より先に開始したオンライン販売では、「ソルト」が人気だったとか。
オープン前に開催された試食会で実食して驚いたのは「ジンジャー」。キャラメルの深みのある味わいとさわやかなショウガのコンビが新鮮で、一緒に出された紅茶との相性が抜群。ほかの出席者からも「おいしい!」という声が自然に上がった。
意外な発見は酒のアテにもなることだ。ドライフルーツを使ったラインアップには、ほろ苦さをまとったイチジクやミックスフルーツがあり、ワインからウイスキーまで酒とは好相性。ソースタイプなども含め、チーズやナッツともよく合い、酒の席を盛り上げる新顔になりそうだ。
イチジクのような甘いドライフルーツと甘いキャラメルを合わせると、甘ったるくなりそうだが、「ほろ苦さを出したキャラメルと合わせると、ドライフルーツの甘さのネガティブな部分を抑え、良い部分が際立ってくるんです。すっきりとした甘さに変えることができるんですよ」とは、この商品のアイデアを出した小畠さん。
バランスの良い味わいに仕上げるには、ただ材料を混ぜただけではダメで、どのタイミングでどの材料を入れ、どう焼き、どう炊き上げるかといった、業務用商品で培った長年の経験を生かしている。「BtoBの商品を作っていたときから抜群の組み合わせだと思っていたものの、コストの問題などがあり商品化できなかった」(小畠さん)と言い、今回初めてアイデアが実現した形だ。
酒が好きな小畠さんは、白ワインを「ミックスフルーツ」キャラメル、チーズと共に楽しむのがお薦めだと言う。
一方、小西さんのお薦めは、バニラアイスに「バター」タイプをよく混ぜて、上から「ベーシック」タイプのソースをかけること。ソースの味わいはお好みで。「安いアイスでも、一気に高級アイスに変身します」
自由が丘という立地もあり、同店の主なターゲットは30~50代女性。オープン直後に話を聞くと、狙い通りの客層で数個まとめて買う人も目立ったという。中には、若い男性の姿も。「バター」や「フルーツ」タイプの人気が高かったそうだ。
「フルーツ」タイプにはレモンの皮を使ったものや、ラズベリーなどを合わせたものもあるが、「これまでの市場にない新しい味なので、お客様がこれを受け入れてくれたことが驚き」と小畠さん。会社帰りに立ち寄る人もいて、手ごたえを感じている。
今後は、キャラメルのアイスクリームや季節のフレーバー、原料にこだわったプレミアムタイプも、順次発売する予定で、将来的には東京都内に数店舗の出店を目指すという。キャラメルが食のシーンの新顔として根付くか。これからが楽しみだ。
(フリーライター メレンダ千春)
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