日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/2/12
イタリアのティレニア海にそびえ立つ火山島ストロンボリ。手前に浮かぶのはストロンボリッキオという無人島だ(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)

ストロンボリ滞在の最終日に、マグマトレックの最年少ガイド、マニュエル・オリーバ氏の案内で、島の北にある3つの村を見下ろすネイチャーハイキングに出掛けた。ここで生まれ育ったオリーバ氏は、これからもストロンボリで暮らすつもりだ。海岸を浸食から守ることと、島に新しい名産を作るため、海岸近くの土地でマンゴーとアボカドを栽培している。

標高290メートルの展望台に到着した後、オリーバ氏は警備のためにとどまり、私は数日前の夜と同じジグザグ道を下山した。太陽の光が降り注ぎ、暗闇に隠されていたものがはっきり見えた。斜面には、ウチワサボテンや節だらけのオリーブが生えている。眼下では、コバルト色の海がきらめく。

地元のツアー会社が主催するボートツアー。ストロンボリを一周し、火山を360度から眺めることができる(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)

私もザイア氏のように、火山に再び登ったことで元気をもらった。と同時に、ストロンボリに登頂しなくても満足感を得られると気付いた。火山は下から眺めた方が美しいこともある。私は空を見ながら感謝した。

伊フィレンツェ大学で地球物理学と火山物理学の教授を務めるマウリツィオ・リペペ氏によれば、私がストロンボリを離れた翌日、警戒レベルはオレンジから黄色に引き下げられたという。リペペ氏は市民保護局の研究者として、火山の危険度評価に携わっている。

夜の漁を終え、浜に戻ってきた漁師たち(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)

リペペ氏は取材に対し、「火山が少しずつ正常に戻っているということです」と説明した。「ただ、噴火活動は依然として活発なため警戒が必要です。現在、旅行者の立ち入りを許可する場所、高さを検討しているところです」。19年7月と8月の2回の噴火が示唆しているのは、この60年間は火山の活動度が比較的低い時期だったこと、1959年以前のように、今後もっと活発になる可能性があることだ。

リペペ氏は次のように述べた。「島をどのように利用すべきか、どうすれば火山の訪問を楽しく安全なものにできるかを考え直す時期が来たのかもしれません」

ストロンボリを散策する方法はいくつもあるが、自転車であれば一年中楽しむことができる(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)
島に暮らす数百人の家は北部のストロンボリ、かつて漁業が盛んだった南部のジノストラに集中している(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ストロンボリの火山を登る人々。一行を率いるのは、島で最も経験豊富なガイドの一人マリオ・ザイア氏だ(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)
安全な状況では、3~4時間でストロンボリに登頂できる。現在、頂上は閉鎖されているが、ガイドツアーで火山の下部を歩くことができる(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ハイキングガイドのマリオ・ザイア氏はストロンボリで30年以上暮らしているが、年に1度、必ず単独で火山に登る。「私と火山だけ。ほかには誰もいません」とザイア氏は語る。「火山は地球の奥深くにある未知の世界を教えてくれる存在です」(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)
世界中からファイヤーアーティストが集まり、ストロンボリで一緒にパフォーマンスを行う(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ストロンボリの村に並ぶ白く塗られた家の一つ(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ストロンボリの漁業はティレニア海に支えられている(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)
レストラン、プンタ・レナ。海を眺めながら、旬の食材や伝統料理を味わうことができる(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)
プンタ・レナの名物料理カタクチイワシのマリネ(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)
ストロンボリは溶岩の噴出が独特で、科学者たちは同じ特徴を持つほかの火山の噴火に「ストロンボリ式」という言葉を用いている(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NATIONAL GEOGRAPHIC)

(文 GIANNELLA M. GARRETT、写真 ANDREA FRAZZETTA、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年1月12日付の記事を再構成]