セクハラ・介護… 「移民」も直面する日本の社会問題国士舘大学 社会学 鈴木江理子(4)

まずは「移住連」について教えてもらおう。

川端裕人さん。

「1996年に前身ができた時には、移住労働者と連帯する全国ネットワークという名称で、労働者がメインだったんです。でも、実際には移住労働者の家族など、労働者に限らない課題にも対応しているので、NPO法人化した2014年に、『移住者』と変えました。海外の会員もあわせて個人が400人超、団体が100団体ちょっと入っています。研究者もかなり多いんです。移住連は、毎年、省庁と交渉をしているので、統計などの情報も持っていますから」

移住者という広い括りの中にどんな人たちがいるのか、すでに今回の連載で解説した。本当に様々な出自の人たちが、様々な時期に日本に来ていることは、あらためて見ると驚くべきことだ。そして、やってきた人たちは、日本で家族形成をしたり子育てをするなどして、ぼくたちの社会に根付いている。移住連がひとつの団体としてすべてにかかわるというよりは、日本各地でそれぞれの問題に対峙している様々な団体や個人がネットワークを作っているというイメージだ。

移住連のウェブサイトを見ると、キーワードとしてこんな言葉が掲げられていた。

ここにいる、と。

移住者であり、移民として捉えるべき人たちが、すでに、ここにいる、という意味だ。

移住連サイトのトップページより。(画像提供:移住連)

「結局、人間として来ているわけですから、私たちの社会の中にある問題は、移住者/移民たちの中にもあるんです。例えば、私たちが充分に取り組めていないものとして、在日の人とか、中国帰国者の介護の問題があります。第1世代の高齢化が進んでいて、中国帰国者向け、在日コリアン向けの介護施設というのもでき始めています。つまり、ライフサイクルの中であらゆることを同じように経験していくことになります」

本当に活動は多様で、それはそのまま、日本の移住者問題、移民問題の多様さそのものだ。鈴木さんが言う通り、ぼくたちの社会で見られる問題のすべてが同じようにそこにある。

ウェブサイトにも掲載されている主要なプロジェクトの中から、鈴木さんとの話題にあがったものをいくつかピックアップする。

まずは、女性の問題。

「国際結婚などで日本に来た移住女性は、弱い立場にあって、外国人であり女性であるという二重の意味で差別を受けがちです。DVですとか、離婚、地域での孤立、それから、『ジャパゆきさん』に始まるシングルマザーの問題ですね。さらに最近では、技能実習女性のセクハラや労働問題もありますし、介護労働者も多くなって、そこでの問題もあります」

「ジャパゆきさん」とシングルマザーというのは、とても大きな問題で、当然ながら、今では子どもたちも大きくなっている。JFC(ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン)と呼ばれる人たちがおり、これはつまり、日本人男性とフィリピン人女性の子どもたちという意味だ。法的な結婚をしていない場合、父親が認知しないと日本国籍をもらえず、母親とともに大変な思いをする子たちがいる。

さらに、技能実習生が直面する問題は、セクハラなどの被害はもちろんだが、さらに先鋭化したとも言えるケースがたびたび見られる。

「技能実習生が妊娠したら、中絶するか帰国するか選択を迫られるケースは実際にあるんです」と鈴木さんは言った。

家族を伴わない単身渡航でやってくる若者だから、恋愛もするだろうし、妊娠することもあるだろう(またひどい話だが、セクハラの結果として、妊娠に至ることもあるかもしれない)。それでも、あくまで単身での渡航で就労することが条件なので、出産することが制度として想定されていない。

入管法対策というのもとても大きなテーマだ。

「法律が変わるたびに、外国人管理や排除が強化されていくので、私たちは『管理・排除ではなく共生のための制度を!』と言い続けています。例えば、1980年代から90年代にかけて、労働力不足を満たしていたのは、オーバーステイの非正規滞在者が多かったんです。まだ緩やかな排除の時代で、おまわりさんも『あの人はオーバーステイ』と知っていても普通に挨拶して見逃しているような時代でした。でも、21世紀になって、技能実習制度などサイドドアからの労働力供給が十分に機能するようになって、さらにフロントドアからの受け入れも検討され始めたので、じゃあバックドアは閉じましょうと、一斉に摘発を始めました。2003年12月に、半減計画(今後5年間で非正規滞在者を半減する計画)が出された時、本当にできるのかと思っていたら、実際に目標を達成してしまいましたから」

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