氷川きよしの変身と輝き 湯川れい子が思ったこと

日経ARIA

「女の子だってハメを外して遊びたい」から35年

今回のシンディのツアーは、「デビュー35周年Anniversary Tour」と銘打ったもので、シンディが初めて「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」という大ヒット曲を出してから、ちょうど35年になります。

この曲が最高位全米第2位を記録した1984年3月10日のほんの1日前にプロモーションのために初来日。芝浦の寺田倉庫のロフトを会場に、鮮やかなスカートとオレンジ色に染めた髪を振り乱しながら、はだしで踊り回って歌った日が、シンディと私の初対面で、その日から私たちは35年という長い友情を育んできました。

「シンディ・ローパーとは35年という長い友情を育んできました」

そのデビュー曲「Girls Just Want To Have Fun」は、日本でもオリコンの洋楽シングル・チャートで1984年4月30日から3週間も第1位を続けたのですが、このシングルに日本では「ハイスクールはダンステリア」というタイトルを付けてヒット。そのことを知ったシンディは激怒すると、当時の担当ディレクターだったソニー・ミュージックエンタテインメントの堤光生さん(故人)に面談。すぐにシングルもアルバムも作り直して、今の「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」にしてもらったのでした。

それはなぜだったのか? 日本でドリームズ・カム・トゥルーの「うれしはずかし朝帰り」が大ヒットしたのは、それから5年後の1989年9月のこと。5年後の日本でも、まだ女の子が朝帰りするなんていう歌は衝撃的だったのです。

「女の子だって、たまにはハメを外して遊びたいし、別に悪いことをしている訳じゃないわ。ただ踊っていたのかも知れないし、私みたいに歌っていたのかも知れないじゃない。それなのに、どうして女の子だけが怒られるの? お嫁に行けなくなるって、どうして? 夜道が危ないとしたら、それは治安の問題であって、女の子が責められるべきことではないでしょう? 女の人だけが、どうして誰かの、あるいは社会の所有物にされてしまうのか、考えてみてほしいのよ。だからまるで高校生向きのダンス・ナンバーみたいなタイトルを付けられたことに、私はすごい怒りを感じたの。でもその話をしたら、テリーさん(堤さん)はすぐに理解して下さって、大変なお金がかかるのに、全部すぐに作り直して下さったの」とシンディは話してくれたのでした。

#MeTooやLGBTへの差別 今もある人権問題

あの華やかなハリウッドを舞台に、セクシュアル・ハラスメントの被害を訴える#MeToo運動の発端となった記事が、ニューヨーク・タイムズに載ったのは、2017年10月のこと。日本では「LGBTの支援などいらない」「LGBTは生産性がない」と、女性議員が書いた記事や発言が問題になりましたが、それは#MeTooよりも少し後の2018年のことでした。

男女同権とか、性的マイノリティーと言われる人たちに対する人権問題などは、もうどこかで常識とか良識の範囲で社会に定着しているものと思っていたのですが、アメリカでも日本でも、決してそんなことはなかったと知って、びっくりしたものでした。

あのバイセクシュアル、ホモセクシュアルで苦しむクイーンのフレディ・マーキュリーが話題となった映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットしたのは、2018年から19年にかけてのことでしたが、その後、エルトン・ジョンを主人公としたミュージカル仕立ての映画「ロケットマン」が公開されたのは、日本では2019年の8月でした。

そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、「共生社会の実現」をテーマに、「障がい者やLGBTの人々を含めた多様な個性を持つ人々」が、喜んで参画できる活動を展開すると発表されています。

これは本当にうれしい発表です。なぜなら今でも、武装して戦うことを選択している国では、軍隊の秩序や、神様の言いつけに背くからと言う理由で、LGBTを認めない人たちや国があるからで、私のように、どんな理由があっても、人間が人間を殺し合うのは間違いであり、どんな武装をしても、武器で平和を築くことはできないと考える人間にとっては、オリンピックのテーマは世界に誇れる活動であり、自由を尊ぶ民主主義国としての姿勢だと思うからです。

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氷川さんは音楽の神様から選ばれて生まれて来た人