超巨大ブラックホールを詳しく観測 X線の道草を利用

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/2/10

「反響マッピングは、空間分解能にまったく依存しません」。同じ技術を使って遠方のブラックホールを研究している米ジョージア州立大学のミスティ・ベンツ氏はそう述べている。「この技術では物体内部での光エコーを利用して、その構造を示せます。それは天体が非常に遠くにある場合でも変わりません」

「事象の地平線望遠鏡(EHT)」が撮影した、近傍の銀河メシエ87の中心にあるブラックホール(PHOTOGRAPH BY EVENT HORIZON TELESCOPE COLLABORATION)

物理法則で最大とされる速度の97%

IRAS 13224-3809から捕捉された光エコーから、アルストン氏のチームは、ブラックホール周辺の物質の正確な形状を把握できた。その中には、光エコーの発生源である活発なX線コロナの寸法も含まれる。研究チームは次に、この情報を用いてブラックホールの質量とスピンを計算した。これらふたつの特性は、人類のタイムスケールでは変化しない。

「ブラックホールの質量とスピンを測定するには、周囲のガスがブラックホールに落下する前に、正確にどこにあるのかを知る必要があります」と、アルストン氏は言う。このやり方は、これまでにも超大質量ブラックホールの研究に用いられてきたものだが、今回のIRAS 13224-3809の観測に比べると期間が短く、また光源も大きく変動しなかった。

新たなマッピングに基づき、研究チームは、IRAS 13224-3809には太陽200万個分の質量が含まれており、それが物理法則で最大とされるスピードの97%という超高速で回転していると結論づけた。

アルストン氏のチームはまた、X線コロナが時間とともに変化し、1日でその大きさが劇的に変動する様子を示す動画も作成している。

超巨大銀河の「種」とは

宇宙に存在する大型の銀河はすべて、中心にある超大質量ブラックホールに錨のような力で固定されていると思われる。その錨がどのように回転しているのかを解き明かすことは、ブラックホールとそれを含む銀河がどのように形成され、進化してきたかを知る手がかりとなる。

「超大質量ブラックホールがどのように形成されるのか、まだわかっていません」とアルストン氏は言う。「初期宇宙において、何がブラックホールの種となったのでしょうか。これまでに作られた大半のモデルが示すのは、今のところ非常に小さい種ばかりで、あれでは十分な速さで成長できません」

銀河が形成される過程としては、複数の小さな銀河が衝突、合体するというものもある。銀河が合体する際には、中心にあるブラックホールも合体する。もし無秩序な衝突であれば、形成されるブラックホールが大きくなるだけでなく、スピンの仕方にも影響を与えると、アルストン氏は言う。

ブラックホールが大きくなるもうひとつの可能性としては、ガスが継続的に流入することが挙げられる。この場合、IRAS 13224-3809のブラックホールのように、スピンがより速くなると予測される。だが、この銀河がこうしたメカニズムで質量を増したと結論づけるのは時期尚早だと述べている。

アルストン氏のチームが最終的に目指すのは、反響マッピングを利用して、付近に何百とある超大質量ブラックホールのスピンを測定し、実質上の全数調査を行うことによって、その形成の歴史を明らかにすることだ。これが実現すれば、それらのブラックホールがどのくらい遠くにあるかに基づいて、宇宙の誕生から現在にかけて銀河がどのように成長してきたのかを調べられるだろう。

(文 NADIA DRAKE、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年1月22日付]

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