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異色のダブルシェフ 個性かけあうイタリアンの魅力

1月のランチコースの一品「仔羊のストゥファート ウズラ豆のトフェイヤ」。ストゥファートとは長時間コトコトとストーブで煮込む料理。同店では食材を変えながらランチコースに必ずラインアップする。1月の料理にはラルド(豚の背脂)や揚げた豚皮が添えられ、幅広い食感、味わいが楽しめる趣向だった

実は「SALONE2007」は、シェフが2人いる「ダブルシェフ」というユニークな体制を取っている。メニューは弓削さんが最初に大枠を作るが、その後、相方のシェフである青木一誠さんとのキャッチボールで、実際のメニューに落とし込んでいくのだ。青木さんも、もともとは介助犬の訓練士を目指していたというユニークな経歴。ところが、アルバイトをしていたファミリーレストランのイタリアンフェアでパスタを作ったことから、イタリア料理に興味を持った。

パスタ作りはどこが面白かったのか尋ねると「カッコいいからじゃないですかね」と屈託がない。そして、いくつか日本のイタリア料理店で働いた後、29歳でイタリアに旅立つ。「直前にお世話になったシェフがすごく北イタリアが好きで影響されました」と、修業をすることになったのはピエモンテ州の州都トリノ近郊のミシュラン一つ星店「リストランテ・ガルデニア」。現地ではあふれんばかりの未知の食材や郷土料理に魅了された。

「スパゲッティ ポモドーロ」。毎月ランチコースのシメ料理として提供されるシンプルだが濃厚、後を引くトマトのパスタで創業当時からの定番料理。20グラムから好きな量をオーダーでき、同店では最高1キロ、オーダーした客がいたそう。写真は60グラム

ダブルシェフのコンビは「夫婦漫才のよう」と2人は口をそろえる。絶妙なキャッチボールで料理が完成し、コースが組み上がっていくという意味だ。青木さんが「これぞイタリア!」という料理を提案すると、弓削さんは「こうした方が楽しいのでは」と、「SALONE2007」ならではの料理としてのアイデアを出す。

「もちろん、逆のパターンもあります。1月のディナーには、青木さんがとてもおいしいイノシシのタヤリン(平たく細いリボン状の手打ちパスタで卵黄を多用する)を作ってくれて。こんなにパスタがおいしいなら、パスタを前面に出したシンプルな料理にした方がいいと。それで、パスタをシンプルにした分、前後の料理を面白くしようと考えました」(弓削さん)

1月のコースのデザート「王林のクロスタータ ゴルゴンゾーラのジェラート」。クロスタータとはパイのこと。サクサクの生地と薄いリンゴのスライスの上に塩味が利いたアイスをトッピング。グラッパ漬けのレーズンやクルミもちりばめられた、酒とも合うデザート

同月のコース料理の、ソバ粉を使ったイタリア版クレープ「クレスペッレ」も、青木さんのアイデアにはっとした。「ソバ粉のクレープをコースに入れようと決めたものの、もともとは緩めのソースで炊いて、しっとりした状態で食べる料理のイメージだった」と弓削さん。

しかし、このメニューを任された青木さんは、ウサギ肉を巻いたクレープをオーブン焼きにした。「クレープの端の部分がパリパリとして香りが立つ。中のしっとりした部分とのコントラストが際立ち、僕のイメージとは全く違う仕上がりでした。『夫婦漫才』だから、新たなこの料理の面白みを発見できたんです」(弓削さん)

小気味のよい夫婦漫才の掛け合いのように、ダブルシェフ体制の料理で楽しみたいのは、掛け合いの妙。2人の個性がどんな風にコースとして1つのストーリーを描くに至ったのか。想像を膨らませるのも、同店の料理ならではの醍醐味だろう。

(フリーライター メレンダ千春)


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