乳がん、早期なら「切らない」選択肢も 凍らせて治療女性にとって身近ながん(下)

日経ヘルス

(写真はイメージ=PIXTA)
(写真はイメージ=PIXTA)
日経ヘルス

検診などで見つかった乳がんをどのように治療すればよいのか――。手術を行い、術後は再発・転移予防のために薬を飲むのが基本だ。さらに早期であれば、“切らない治療”でもある凍結療法も選択肢となる。

◇  ◇  ◇

治療法は、がんの性質や進行度などに応じて決められる。基本は手術で、乳房の形をできるだけ残してがんを取り除く「乳房温存術」が主流だ。術後、再発や転移を防ぐために行う薬物療法では、「患者ごとにがん細胞の特性を調べ、サブタイプに応じて薬の内容を決める。最も多いのは増殖能力が低く、比較的おとなしいタイプの『ルミナルA』で、ホルモン治療がよく効く」と昭和大学医学部乳腺外科の中村清吾教授。

しこりの大きさが2cm以下でリンパ節への転移がないステージI期なら、10年生存率は96%。II期でも86%。しかし、局所進行がんのIII期になると59%、遠隔転移のあるIV期では16%に低下する。乳がんは他のがんに比べて治療しやすいといわれるが、それは早期発見・早期治療が大前提だ(データ:全がん協「部位別臨床病期別10年生存率」2002-2005年初発治療症例より作成)

乳がんは早期に見つけて治療をすれば10年生存率が96%だが、発見と治療が遅れると生存率も当然低下する。早期発見・治療が何より重要だ。

早期なら治療法の選択肢も広がる。例えば“切らない治療”として注目されているのが、「凍結療法」だ。直径3.4mmの針を患部に刺し、がん細胞を凍らせて破壊する。対象となるのは、がんの大きさが1.5cm以下でリンパ節に転移がないルミナルAタイプだ。この治療法のパイオニアである亀田総合病院乳腺科の福間英祐主任部長は、「体への負担が軽く、傷もほぼ残らない。2006年から304人に実施し、12年間で局所再発したのは3人。乳房温存術と同等、もしくはそれ以上の非常によい成績」と話す。

この他、がんを熱で死滅させる「ラジオ波焼灼療法」も切らない治療の一つ。こちらは国立がん研究センターなどで臨床試験が進行中だ。

凍結療法については、亀田総合病院では、治療は局所麻酔で、1時間程度で終了。日帰り治療が可能だ。健康保険は利かず、自費で35万円(税別)。治療後は、再発・転移予防で放射線治療とホルモン治療を行う。ラジオ波焼灼療法については、超音波画像を見ながらがんに電極針を刺し、その先端からラジオ波を発生させて熱でがんを死滅させる。直径1.5cm以下でリンパ節転移のない早期の乳がんが対象。治療は入院して行い、治療後は放射線治療を追加する(図:三弓素青)

◇  ◇  ◇

乳房再建、インプラントで悪性リンパ腫のリスク!?

乳房再建術で健康保険の対象になっていたアラガン社のインプラントが、19年7月、販売中止になった。合併症として特殊なリンパ腫が起こる危険性があるとわかったからで、日本でも1例の報告がある。

「このリンパ腫は、再建術から8~10年後、約3300人に1人の割合で発生するとされる。インプラント周辺に水がたまるのが初期症状なので、使用している人は年に1回エコー検査を受けるようにすると安心。再建した乳房に腫れや痛みなどが出てきたら、必ず医師に相談をしてほしい」と中村教授は呼びかける。

中村清吾さん
昭和大学医学部(東京都品川区)乳腺外科教授。1982年、千葉大学医学部卒業。専門は乳腺外科。聖路加国際病院ブレストセンター長などを経て、2010年から現職。日本乳癌学会監事、日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)理事長、日本外科学会理事なども務める。
福間英祐さん
亀田総合病院(千葉県鴨川市)乳腺科主任部長。1979年、岩手医科大学卒業。専門は乳腺外科。聖路加国際病院、帝京大学医学部附属溝口病院などを経て、2000年から亀田総合病院で診療。日本乳癌学会専門医・指導医。日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会顧問なども務める。

(ライター 佐田節子、構成 堀田恵美)

[日経ヘルス2019年12月号の記事を再構成]

注目記事
今こそ始める学び特集