マリオになって冒険 USJの任天堂エリアはスマホ連動

土管を伝ってマリオの世界に飛び込み、ハテナブロックをたたくなどしてコインやアイテムを集める。ゲームではない。大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が2020年夏に開業する新エリア「SUPER NINTENDO WORLD」にアトラクションを導入する。合言葉は「#WE ARE MARIO!!」。ゲームとリアルが融合し、全人類がマリオ化する。
世界のマリオファンに向け発信
20年1月14日。USJの最古参アトラクション「ターミネーター 2:3-D」が「グローバルキックオフプレゼンテーション(Global Kick Off Presentaion)」と銘打った発表会場に変わった。
オープニングムービーで映し出されたのは、世界中のマリオファンが「#WE ARE MARIO!!」をつけて盛り上がるSNSの様子。USJが世界初の任天堂エリアとなる「SUPER NINTENDO WORLD」の建設を発表してから3年以上。ついに、そのキーテクノロジーが明らかになった。
最大のポイントは、まさにマリオになれること。エリア内で購入できる「パワーアップバンド」を腕に装着し、それをUSJの公式スマホアプリと連動させる。すると、エリア内に点在するハテナブロックを、マリオと同じように飛び跳ねてたたけば、コインを獲得できるようになるのだ。


集めたコインの数はアプリ内で確認できる仕様。キャラクタースタンプなどのアイテムも用意されており、集めれば集めるほどコインに換算できる。獲得したコインの総数で、ゲスト同士、ランキングを競い合えるというゲーム性の高いエリアとなる。
エントランスは土管。地上と地下を行き来する多層構造となり、ゲームで見たピーチ城やクッパ城、キノコ王国が忠実に再現され、マリオ目線で冒険できる。「本物」のマリオカートや、「ヨッシー」の背中に乗れる家族向けのライドアトラクション、さらにはショップ、レストランが軒を連ねる予定だ。
「ボスバトル」にも参戦可能
「クッパジュニアがゴールデンキノコを盗み、鍵をかけてしまうところからSUPER NINTENDO WORLDでの皆さんの冒険が始まる」。今回の発表会のために米オーランドから駆け付けたユニバーサル・クリエイティブの副社長CCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)ティエリー・クー氏は、そう種明かしをした。
エリア内には「キーチャレンジ」と呼ばれるメインゲームが3つ用意されており、このチャレンジをクリアすることでキー(鍵)を回収する。これが、他のゲストと協力しながら参戦できる「ボスバトル」への扉を開く。
「3つキーを集めれば、クッパジュニアに挑める。バトルに勝てば、ゴールデンキノコを助け出し、コースをクリアできる。探検し、チャレンジし、ゲームをクリアする。これがSUPER NINTENDO WORLDだ」。


世界で最も影響力のあるテーマパーク・クリエイタートップ10にも選出されたクー氏は、こう紹介したうえで「テーマパーク体験のゲームチェンジャーになる」と並々ならぬ自信を見せた。
USJを運営するユー・エス・ジェイ(大阪市)のJ.L.ボニエ社長CEO(最高経営責任者)も「世界のどこにもないリアルゲーム体験が現実になる。クオリティーには絶対の自信がある」と断言した。
なぜ任天堂とタッグを組んだか
USJがSUPER NINTENDO WORLD建設に当たって投じたのは総額600億円超。ハリポタエリアこと、「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」(約450億円)をはるかにしのぐ、パーク史上最高の超大型投資となる。
「マリオの生みの親」で、文化功労者となった任天堂代表取締役フェローの宮本茂氏をはじめ、任天堂のクリエイティブチームが完全協力した世界初の任天堂エリアは、いかにして生まれたのか。
「まず念頭にあったのは、人間にとって遊びはすごく重要だという話。かつてホイジンガという哲学者が、人間をホモ・ルーデンスと定義した。人間は遊びから学び、挑戦し、発展してきた。任天堂とUSJはこれまでずっと『遊びのイノベーション』を起こしてきた。日本から遊びの革新をさらに起こしていきたいということで一致した」(ユー・エス・ジェイの山本歩マーケティング部長)。
山本氏によると、新エリアは「遊びの本能を解き放つポイントを全て網羅している」という。そのポイントは、ゲームの体験を直にリアルに体験できるという「マリオ体験」。競争し、成長していくという「ゲーム性」。周りの人たちと一緒になって楽しめる「一体感」。全身を使って遊べる「身体性」の4つ。「世界に先駆けて最も進んだ遊びを提供するという意味で、新しい歴史を作れると思っている」(山本氏)。
新エリアの開発は米国で進めてきた。宮本氏自身が何度も渡米し、アトラクションを監修。山本氏は「任天堂のクリエイティブチームと膝を突き合わせ、お互いにアイデアを出し合いながら形にしてきた」と振り返った。
従来のエリアと異なるのは、最初からグローバルで人を呼び込もうとしている点にある。日本からではなく、20年2月、米ニューヨークを皮切りに、プロモーションをスタートする。「世界がこのエリアに注目していることを発信し、社会現象を起こしていきたい」(山本氏)。
世界的なアーティストを起用したミュージックビデオも解禁した。タイトルは「WE ARE BORN TO PLAY(=私たちは遊ぶために生まれてきた)」。
マリオのBGMが随所にサンプリングされた躍動感あふれるダンスチューンに仕上げたのは、スウェーデン出身のプロデューサー「Galantis(ギャランティス)」とイギリス出身のポップ界の新生「Charli XCX(チャーリーXCX)」。大の任天堂ファンというつながりでコラボが実現した。世界的なテーマパークへの飛躍を目指す橋頭保(きょうとうほ)になる。
グランドオープンに先立ち、USJは20年、ブランドスローガンを一新した。新たなブランドスローガンは「NO LIMIT!」。「激しいライブパフォーマンスだったり、激しく水をかけるイベントだったり、ゾンビでパーク内を埋め尽くしたりと、世界のどのテーマパークよりも刺激的なアトラクション、イベントを提供してきたのがUSJ。限界を打ち破る、圧倒的な刺激によって人々を超元気にしたい」(山本氏)。

新スローガンのもと、最初にベールを脱ぐエリアが、SUPER NINTENDO WORLDとなる。「まさにグローバルプロジェクト。今回発表したのは、本当にさわり。これからどんどん詳細を発表していく。今のところはマリオだけだが、将来的には(マリオ以外の任天堂IPへと)拡大したい」と意欲を見せた。
SUPER NINTENDO WORLDは、まずUSJでオープン後、米ハリウッドとオーランド、シンガポールのユニバーサル・スタジオにも順次展開されていく予定だ。
(日経クロストレンド 酒井大輔)
[日経クロストレンド 2020年1月17日の記事を再構成]
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