部屋干し・ダニ対策… 布団乾燥機、4年で需要2倍超
大河原克行のデータで見るファクト
寒い日が続くと、温かい布団がうれしく感じる。そう思う人は多いようで、寒い冬場に温かい布団を求めて、布団乾燥機を利用している人が増えているようだ。一般社団法人日本電機工業会によると、2015年度には年間65万9000台だった布団乾燥機の国内出荷台数は、2019年度には160万台に達すると予測されており、4年間で2.5倍に近い規模にまで市場は拡大している。
布団乾燥機が売れ始めている理由はいくつかある。
一つは、布団乾燥機そのものの使い勝手が大幅に改善されているという点だ。
マット不要な製品が主流に
かつての布団乾燥機は、布団の間に乾燥マットを入れる必要があったが、昨今の製品ではそれが不要にしたものが主流だ。一度乾燥マットを敷いて、その上に布団をかけるという手間がなくなり、布団の間にノズルを差し込むだけでいい。
たとえば、シャープの場合、きのこの形状を採用した「きのこアタッチメント」を採用し、マットなしで暖かい空気を充満させることができる。シメジなどの群生する小さなきのこが、胞子を遠くへ拡散するために風の流れを整える仕組みに着目して、これを模倣。力強い風を遠くまで届けることができるようにしたという。
従来モデルでは、大型のきのこを模倣していたが、小さなきのこの形状を採用することで、より効率化。本体の体積は約43%、重量は23%減という小型、軽量化を実現し、奥行きは135mmに収めているため、ベッドの下に収納したり、収納棚にしまったりといったことも可能になっている。布団乾燥機は収納場所に困るという、これまでの課題を解決することにも成功した製品だ。
また、日立グローバルライフソリューションズでは、「V字型 ふとん乾燥アタッチメント」を採用し、約28分というスピード乾燥を実現。忙しくて時間がないときでもすばやく快適に温めてくれる。「冬場に限らず、冷房の効いた部屋で過ごすことの多い夏でも、放熱のために足もとを温めることは重要。「暖めコース」を利用すれば、約5分で足もとを温めることができ、「寝る支度をしている短時間で足もと部分を温めて、快適に寝ることができる」という。
パナソニックの布団乾燥機では、独自の「すぐぽかノズル」を採用。布団の中に空間を作り、敷き布団への下向き温風と、掛け布団への上昇温風を効率的に送り込み、布団の広範囲にすばやく温風を広げ、消費電力を抑えながら、しっかりと温めと乾燥ができる。乾燥マットを使用しない手軽さを訴えている。
三菱電機のように、乾燥マット方式にこだわっているメーカーもある。
同社では、「布団のすみずみまで、きちんと快適に、清潔に乾かすためにマット式にこだわっている。風路を工夫したマットの研究、開発により、マット式ならではの満足度の高い仕上がりを目指した」としている。しっかりとした温めを実現したい人にはお薦めだ。
ちなみに、三菱電機の布団乾燥機では、部屋の温度に合わせて、布団乾燥および温めの仕上げ温度をおまかせで調節。夏はサラッとさわやかに、冬はしっかりと温かく、春秋はほどよいぬくもりといったように、季節に合わせた使い方も可能になっている。
外干しが難しくなってきている
二つめには、布団の天日干しが難しくなってきていること。PM2.5や黄砂、花粉といった大気への不安があったり、高層マンションなどでベランダでの布団干しを禁止するケースが増えたりしている。
高齢者の増加も影響している。ベランダへの布団干しは、高齢者には身体的負担が大きいのは確かだ。布団を移動させずに、片手で持ち運ぶことができる布団乾燥機を使って、布団を乾燥し、温めることができれば、身体的負担が大幅に軽減されることになる。
家族が多い世帯でも同様のメリットを生む。
たとえば、家族4人の場合、寝室から干す場所まで布団を運んで、取り込むのに8往復しなくてはならないが、布団乾燥機であれば、それぞれが別の部屋に寝ていたとしても、寝室から寝室へと本体を3回移動させればすむ。
しかも、天候に左右されずに布団を乾燥し、温められる。ここ数年は、大型台風の襲来や、長雨といった異常気象が増えており、これも天日干しをしにくい状況を生んでいる。
シャープの調査によると、天日干しの不満として、「天候に左右される」が56.6%、「布団が汚れる」が31.8%。「体力的な負担がかかる」が24.1%などとなっている。こうした天日干しに多くあがっている不満を、布団乾燥機が解決できるのだ。
また、昨今では、1人暮らしの増加や、共働きの増加で、昼間に布団を干すことが難しいという家庭も少なくない。これも布団乾燥機の販売増加の理由のひとつになっている。
衣類の乾燥などにも利用
さらに、布団乾燥機の販売増加のもうひとつの理由としてあげられるのが、メーカー各社が、布団乾燥機を複数の用途に使用する提案をはじめたことだ。
具体的には、衣類の部屋干し乾燥のほか、靴、ブーツの乾燥などにも、布団乾燥機が利用できるといった提案を各社が行っている。スキーやゴルフなどで濡れた小物も、きちんと清潔に乾燥してくれる。
もともと布団乾燥機は、日照時間が短い冬場に使用されることが多く、年間販売台数の約75%が下期(10月~3月)に販売されている。
だが、生活環境や利用環境の変化、屋外環境や天候の影響、そして、用途の多様化により、布団乾燥機を、年間を通じて利用するという動きが増えている。
ダニ対策は天日干しより上
しかし、「なんといっても、天日干しの方が、気持ちがいい」と思っている人も多いだろう。
実際、前述の調査によると、月1回以上布団を天日干しする人は49.0%と約半数に達している。そして、天日干しをする理由として、71.7%の人が「布団を乾燥させたいから」とし、56.6%の人が「ダニ対策をしたい」ことをあげている。
だが、メーカー側では、こうした天日干しの効果についても疑問を投げかけている。
たとえば、ダニ対策。
熱によるダニ対策では、50℃の温度を20~30分間維持することが必要だが、シャープの調査によると、晴天の猛暑日であっても、布団の表面をムラなく50℃以上で20~30分間維持することは極めて困難だという。天日干しでのダニ対策の効果は、限定的と言わざるを得ない。
だが、布団乾燥機であれば、運転開始後約30~40分で、布団全体が50℃を超え、その後、全体を約60~70℃の温度で安定させられ、ダニ対策には効果的だという。
シャープは、温風とプラズマクラスターでダニのふんや死骸による付着アレル物質の作用を抑えられ、「プラズマクラスターによって、布団や枕についたニオイも消臭できる」とする。
プラズマクラスターイオンでは、加齢臭、汗臭、おねしょ臭、カビ臭の消臭効果が実証されており、その点でも効果がある。
また、日立グローバルライフソリューションズでも、専用のダニ対策コースを使用すれば、約90分でダニ対策は完了。別売のダニ対策専用のデオドラント剤を使用すれば、温風とともに、ハーブの香りを、布団内に広げることができる。
ちなみに、ダニ対策終了後は、死滅したダニやふんなどを取り除くため、布団を掃除機で掃除することを推奨している。
冬は、布団乾燥機が活躍するシーズンだが、よりしっかりとしたダニ対策をしたい場合には、年間を通じて布団乾燥機を使用するのがよさそうだ。
布団乾燥機は機能の進化によって、年間を通じて利用できる家電に変化している。
(ライター 大河原克行)
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