海外で就職を選んだ理由 変化のスピード遅い日本企業ダイバーシティ進化論(村上由美子)

2020/1/25
画像はイメージ=PIXTA
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母校の上智大学では国際感覚豊かな学友に恵まれた。特に女性は語学にたけた聡明(そうめい)な人が多く、刺激を受けた。在学中に男女雇用機会均等法が施行され、初代女性総合職として採用される先輩を見ながら次は私も、と期待に胸が高まった。だが大手企業に就職した先輩たちを訪問し、期待は失望に変わった。

スーツ姿の男性と制服姿の女性。入社後数年で退職する女性は総合職でも少なくなかった。お茶くみは女性の仕事という職場の雰囲気は根強いと、彼女たちは不満を漏らした。私は日本での就職を断念し、海外でキャリアを築くと決めた。

あれから約30年。変化のスピードは遅い。昨年末に発表された世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で、日本は121位と悪化の一途をたどっている。政治経済の両面でリーダー的立場の女性が増えていないからだ。

均等法施行当時に総合職で入社した女性は幹部候補となる世代だが、勤続するのはごく少数。候補者が少ないので女性取締役を増やせないとする企業は、そもそも女性リーダーを育成する企業文化づくりに真剣に取り組んだのだろうか。

日本企業の経営層における多様性の欠如は、世界的に際立っている。海外事業が売り上げの半分を超える大企業でさえ、リーダー層の外国人は少数派だ。テクノロジー分野に注力する企業でもデジタルネーティブ世代の意思決定者は珍しい。アニュアル・リポートには50~60代の日本人男性のみがずらりと顔を並べる。同質性を是とする企業では多様な才能を確保できず、競争力は低下するだろう。

日産自動車のカルロス・ゴーン元会長を巡る問題を受け、外国人経営者を懐疑的にみる向きもあるが、それもお門違いだ。企業のリスクを的確に察知するには、多様な視点が反映されたガバナンスが欠かせない。独立性の高いガバナンス体制が機能していれば、経営者の暴走を防ぐことは可能だったかもしれない。

もうすぐ高校生になる娘が社会人になる頃、日本での就職は魅力的な選択肢と映るだろうか。男女平等ランキングの下落に伴うかのように地盤沈下する日本経済に見切りをつけ、かつての母同様、海外で働く道を選ぶ可能性は高いかもしれない。30年間、日本は何をしていたのだろう。取り戻すには、今すぐ変革に取り組むしか道はない。

村上由美子
 経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。

[日本経済新聞朝刊2020年1月20日付]

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