常識超えに潜むリクルートのリスク ハーバードの視点ハーバードビジネススクール教授 シカール・ゴーシュ氏(下)

リクルートの創業者、江副浩正氏
リクルートの創業者、江副浩正氏

世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。起業家精神を教えるシカール・ゴーシュ教授は、リクルートの創業者、江副浩正氏を「典型的な起業家」とみる。

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佐藤 ハーバードビジネススクールの教材「グローバル化する日本のドリームマシン:株式会社リクルートホールディングス」の冒頭は「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という創業者、江副浩正氏の言葉で始まります。同じ起業家として、ゴーシュ教授はリクルートの創業者、江副氏のことをどのように評価しますか。

ゴーシュ 江副氏はいわゆる「典型的な起業家」です。世間一般の人たちが抱く起業家のイメージをそのまま体現したような人です。

現実を超えてみせる起業家

ハーバードビジネススクール教授 シカール・ゴーシュ氏

リソース(ヒト、モノ、カネ)がない中でも、大きな課題に挑戦する。その課題を解決するために、リソースを得る方法を見つけ出す。失敗することを恐れない。常識にとらわれず、新しいビジネスを創造する。これらは多くの起業家に共通する特性です。ところが、「常識にとらわれない」部分の歯止めがかからなくなってしまったがために、リクルート事件を起こしてしまったのです。

江副浩正氏は、ある意味、トラビス・カラニック氏(ウーバーの創業者)やアダム・ニューマン氏(ウィーワークを運営するウィーカンパニーの創業者)に似ていると思います。彼らは普通の人よりも大きく考え、大きなことを達成しようとします。「現実はこうだから、とか、前例がないから、とかは関係ない。自分がその現実を超えてみせる」というのが彼らの基本的なスタンスです。これがどんどん過激になっていくと、社会のルールさえ破るようになります。

最近のアダム・ニューマン氏を見てください。彼は時価総額500億ドル企業(現在は200億ドル程度に下落)を創業したのと同じぐらいのエネルギーを、社会のルールを破ることに注いでいます。

佐藤 江副氏はリクルート事件で逮捕され、リクルートを危機に陥れましたが、同時に現在に続くリクルートの礎を築きました。起業家の「常識を超える」行動は、プラスにもマイナスにも働くということですね。

ゴーシュ 企業ブランドも確立されておらず、リソースも潤沢にないスタートアップ企業が成長していくにはどうしたらいいのでしょうか。その方法はニッチ市場(隙間市場)で勝負することです。たとえばイーロン・マスク氏はテスラやスペースXを起業しましたが、いずれも勝負しているのはニッチ市場。ある特定の分野においてトヨタ自動車や米航空宇宙局(NASA)と競争しています。

ではどうすれば、ニッチ市場で新しいビジネスを生み出せるのか。それには業界の常識を超えて発想するしかありません。

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