「営業は天職」 伊藤忠で覚醒、売りまくって得た極意カルビー元会長 松本晃氏

その専務がある夜、突然に「いったん高知に帰る」と言い出し、僕が車で自宅に送ったこともありました。その日は専務の家に泊まり、翌朝に飛行機で大阪に戻りました。専務は、そうやって僕を使う一方で、大阪行きの航空券を用意してくれました。作業船というのは1隻3億円ぐらいのものでしたが、船主と造船所の両方から口銭(手数料)をもらい、融資の金利も高かったので、相当なもうけになりました。

入札ほぼ全勝、裏では泥臭く努力

3年半で東京本社に転勤になりました。東京での仕事はほとんど輸出業務で、売る物もだいたい決まっていました。それでも海外まで一生懸命売り込みに行きました。最初はフォークリフトなどの輸出で、そのうちコンテナクレーンや石炭の積み出し設備なども手掛けるようになりました。その後は農業機械です。

入札もずいぶんやりましたが、負けたのは1回だけです。あとは全部勝ちました。今の入札は価格の勝負で、最低価格を提示したところがほぼ勝ちます。ところが、当時は価格だけじゃなかった。総合点で1番が決まるので、とにかく泥臭くいろんなことをやりました。ちょっと危ない橋も渡ったかな。競合会社の誰よりも一生懸命努力した。それだけは自信を持って言えます。

営業で成功する方法も色々と学び、身につけました。一番大事なのは、お客さんの所へよく行くことです。行けば行くほど親しくなれますし、相手が何を望んでいるかわかってきます。ビジネスというのは昔も今も変わりません。相手の抱えている問題をつかみ、どうしたら解決できるか考える。基本的にはそれしかありません。もう一つ大切なのは、約束を守ることです。約束を破ったら、相手との信頼関係は一瞬にして崩れます。

営業をしていて発見したのは、「人は買いたい物を買うのではない。買いたい人から買うのだ」ということです。だからこそ、とにかく足を運び、相手の懐に入っていき、信頼関係を築くんです。

これは誰にでもできることではありません。だから会社としては、そういうことができる優秀な人材を探し、採用し、育てないといけない。つまり人への投資が大切になってくるわけです。人への投資は経営者として一番重要という僕の考えは、営業マンとしての成功体験からきているのだと思っています。

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松本晃
1947年京都府生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事入社。93年にジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)日本法人に転じて社長などを歴任した。2009年にカルビーの会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。停滞感のあった同社を成長企業に変え、経営手腕が注目されるようになった。11年には東証1部上場を果たし、同社を名実ともに同族経営会社から脱皮させた。18年に新興企業のRIZAPグループに転じ、1年間構造改革を進めたのも話題に。

(ライター 猪瀬聖)

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