国立大の学費上げ、なぜ相次ぐ 学生に国際競争の余波

2020/1/20

経済協力開発機構(OECD)のデータをまとめた国立国会図書館の資料によると、1998年に大学の学費を無料から有料に転換したイギリス(イングランド地方)では、同年に上限を年間1000ポンド(当時の為替で20万円超)とした授業料が段階的に上がり、現在は9000ポンドを超えている。米国も同様の傾向で、米カレッジボードのリポート(19年版)によると、大学授業料は私立で年間約3万7000ドル(400万円程度)、公立で約1万ドル。それぞれ30年前の2倍超、3倍の水準だ。

学生側の負担、海外でも課題に

小林教授は「多くの先進国では、大学進学率の上昇と財政難で、教育を公費で支えるのが難しくなってきている」と指摘する。グローバルに活躍する教員の確保、IT(情報技術)設備の更新、少人数制の授業の充実などで、教育費はより高くなる傾向にある。「よりよい教育」に終わりはないため、他大学が教育を充実させれば、追随せざるを得ない事情もある。

学生側の負担増は大きな社会課題だ。イギリスや米国は学費の引き上げとともに奨学金の充実を進めてきたものの、奨学金の返済や学生ローンが若者の将来の重荷になっていることが政治的な議論を呼んでいる。20年秋の米大統領選挙でも、若者や子育て世代にとっては学費支援が争点の1つだ。

日本では学生側の負担感が他国より厳しい面がある。OECDは米国、イギリス、オーストラリアなどを「高授業料・高補助」のグループ、日本を韓国やチリと同じ「高授業料・低補助」のグループに分類。日本は、高等教育にかかる費用の5割以上を家計が負担する「家庭依存型」の国となっており、公的な負担は3割にすぎない。この割合はOECD加盟国平均の半分以下だ。

今回の引き上げで、それぞれの国立大の学費は30年で約2倍になる計算だ。父母の賃金が上がらない中での授業料アップは、奨学金制度の利用基準緩和もあって、奨学金ニーズを高めている。日本学生支援機構によると、有利子で奨学金を借りる学生は、2000年ごろに約20万人だったが、近年は4倍の80万人前後で推移している。

20年4月に始まる「高等教育の無償化」も世帯年収380万円程度の家庭が対象で、恩恵を受けられる学生は限られる。同機構による16年の調査では、奨学金を受給している学生の半数近くが世帯年収400万~800万円。国立大は国の支援を受けることで、こうした「中間層」を授業料減免の対象にしてきたが、それも経過措置を設けて終了する予定だ。

大学の発展と学生側の負担のバランスをうまく取りながら、今を生きる若者が安心して学べる環境をつくるにはどうしたらいいのか。国も大学側も学費の引き上げで一息入れている余裕はない。

(福山絵里子)

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