宴会…飲み放題の落とし穴 酒量は約2倍、増えるケガ少量飲酒のリスク(下)

日経Gooday

「海外では、ビンジ飲酒によってケガや、ケンカから死亡に至ることも、かなり問題視されています。経済的損失の原因としては、慢性的な飲酒とビンジ飲酒などの急性の飲酒で半々だったという報告もあります。先日も、私のところにビンジ飲酒が原因で、急性肝炎になって運ばれてきた方がいらっしゃいました。もっともその方はアルコール依存症が寛解していた方でしたが、ちょっとしたきっかけで1日に日本酒を20合、つまり400gのアルコールを摂取していたんですが…」(吉本さん)

20合も飲めば、それは病院に運ばれても仕方ないだろう…。それは極端な例とはいえ、お酒を短時間で一気に飲むことは避けたほうがいいことはよく分かった。

「自分で割って飲むお酒」は注意が必要?

ここまでの説明で、望ましい飲み方は「今よりも酒量を減らす」「休肝日を定期的に取る」「短時間で一気に飲むのは避ける」ということだった。では、お酒の種類はどうなのだろうか。

「ワインを飲む人より、ビールまたはスピリッツを飲む人のほうが、飲酒量の増加に伴う死亡リスクが大きいといった報告があるのは確かですが、一番大事なのはアルコールの量です。ですから、お酒の種類はさほど気にしなくてもいいでしょう。好きなお酒を楽しんでください」と吉本さんは話しつつ、こう補足する。

ただし、種類は問いませんが、短時間で飲むのは避ける、つまり「ゆっくり飲むのが重要です」と吉本さんは話す。「飲み慣れた人が、ウイスキーなどのスピリッツを少しずつ楽しむのは問題ありませんが、酒を飲み慣れていない人がスピリッツを飲むと、短時間でたくさん飲んでしまう傾向にあるので注意してください」(吉本さん)

また、「ウイスキー、焼酎など『自分で割って飲むお酒』は、酔いが回るにつれ、割るほうのお酒の量がどんどん増えていき(つまり濃くなる)、飲んだ量を把握できなくなる傾向があります。ですから、『大容量のお酒は買わない』『飲む分だけを小さな容器に入れ、残りはしまう』ことを推奨しています。もちろん、これは『酔う前にやってくださいね』と伝えています(笑)」(吉本さん)

ああ、耳が痛い。小さい瓶で買うよりお得だからと、つい業務用の容量の本格焼酎やウイスキーを買ってしまうのだが、吉本さんのおっしゃる通り、割る量の酒が増え、だんだん濃くなっていくのが常。特に一人で家飲みの時は止める人がいないため、思った以上に酒量が増えてしまう。少しのお金を節約するために大容量ボトルや、お酒をまとめ買いするのは、健康面では百害あって一利なしのようだ。

安い酒より高級なお酒がいい!?

写真はイメージ=(c)David Molina-123RF

とはいえ、ついつい飲んでしまうのが左党である。他に何かいい対策はないのだろうか?

「私が推奨しているのは『安いお酒ではなく、品質の高い(高級な)お酒を選ぶこと』です。チョコレートなどでもそうですが、値段が高いとパクパクッと一口で食べず、味わって食べますよね。お酒にも同じことが言えます。いいお酒なら時間をかけて、少しずつ味わって飲みますよね」(吉本さん)

確かにこの方法は一利ありそうだ。お財布に優しい値段で入手しやすい酒は、「すぐ買える」という安心感から、つい飲み過ぎてしまうことが多々ある。酒量を減らすためには、「酔うため」に飲むのではなく、「味わって飲む」ことに重きを置くほうがいい。

少し話がそれるが、最近はお酒のイベントなどで、「お酒の提供方法(販売方法)」に変化が表れ始めている。毎年多くの人が訪れる日本酒のイベント「にいがた酒の陣」はこれまで飲み放題だったが、2020年からはチケット制になる。飲み過ぎて体調を崩す人が多かったことなどを考慮して変更になった。他のイベントもまたチケット制に変えるところが増えつつある。

◇  ◇  ◇

「人生100年」と言われる今の時代、「酔う」という快楽を先行させ、病気になってしまったら元も子もない。アルコールの健康リスクを考慮した上で、楽しむ時は楽しむ。そして普段は適量(20g)を心がけ、休肝日をきちんと取る、短時間での大量飲酒は避ける。ごく当たり前のことだが、長く酒を楽しむにはこれを地道に守るしかない。少量飲酒の危険性が示唆されたことで、改めてアルコールのリスクと適量を守る意味を認識してもらえたら幸いである。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト、図版 増田真一)

吉本尚さん
筑波大学医学医療系地域総合診療医学准教授/附属病院総合診療科。2004年筑波大学医学専門学群(当時)卒業。2014年から筑波大学で勤務。東日本大震災を契機にアルコール問題に本格的に取り組み始める。アルコール健康障害対策基本法推進ネットワークの幹事として、プライマリ・ケアを担当する立場からアルコール対策に関わる。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・家庭医療指導医。2014年10月、第3回「明日の象徴」医師部門を受賞。

[日経Gooday2019年12月6日付記事を再構成]

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