西野七瀬 頭は空っぽ、でもセリフは出る不思議な感覚

日経エンタテインメント!

日経エンタテインメント!

乃木坂46でグループ最多となる7回の表題曲センターを務め(Wセンター含む)、2018年にグループでの活動に区切りをつけた西野七瀬。19年1月に入ってからは、『グータンヌーボ2』(関西テレビ)でバラエティ番組のレギュラーMCとなり、ドラマ『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~』(テレビ東京)に銀行窓口係・松田葉子役でレギュラー出演した。そして話題を集めたのが、異例の2クールにわたり放送されたドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)だ。連続殺人が起こったマンションの202号室に住む女子大生・黒島沙和役を自然体で演じ、最終回では一転、狂気の演技を見せて驚かせた。

1994年5月25日生まれ、大阪府出身。2011年、乃木坂46の1期生オーディションに合格し、12年にCDデビュー。14年、初のセンターに抜てき。17年、『あさひなぐ』で映画初主演。18年末にグループ卒業後は、女優、モデル、タレントとして活躍中(写真:佐賀章広)

「『あなたの番です』の放送期間は、どこの現場に行ってもドラマの話をしていただくことが多くて、それだけたくさんの人が見てくれているんだなと思いました。しかも『犯人はこうだと思っているんだけど』とか、みなさんすごく深く語ってくれるんです(笑)。のめり込んで見てくれているという実感ができて、ダブルでうれしかったですね。特に最終回が終わった後の反響は、すごかったです。1週間以上ずっと、行く現場ごとにその話になって、終わらない。『隣に座ると恐い…』『殺されちゃう』とか、ひたすら言われていました(笑)」

『あなたの番です』で忘我の境地に

「『あな番』の話を初めて聞いたのは、クランクインの少し前だったかな。最初からシリアルキラー(連続殺人犯)の役柄で、物語の黒幕だと言われたので、プレッシャーを感じて、『どうしよう…』というのが最初の感想でした。でも、そういう役はやったことがないので、新しい挑戦になる。しかも2クールで、半年間にわたって撮影があると聞いて、試練にもなるというか。この半年をどう過ごすかで、自分にとっていい経験にできるか、そうじゃないかが決まると思ったので、ちゃんと向き合って、絶対に乗り越えようと心に決めました」

乃木坂46時代はおとなしいイメージが強かった西野が、なぜ黒島という殺人鬼役に選ばれたのか。『あなたの番です』の日本テレビ・鈴間広枝プロデューサーは「黒幕が黒島だということは、最初から決まっていました。でも殺人鬼として恐い芝居をしないといけないのは、最後の1話だけ。だから存在感はありつつも、できるだけ怪しく見えない、犯行のイメージから遠い人がいいと思ったんです」と語る。

「黒島みたいなサイコパスの気持ちは分からない。でも分かるようにならないと、という気持ちがあったので、鈴間さんに『どういうシリアルキラーなんですか?』と聞いたり、参考になりそうな映画を見たりしました。調べると、名作と呼ばれる作品が何本かあって、『セブン』(95年/デヴィッド・フィンチャー監督)と『殺人の追憶』(03年/ポン・ジュノ監督)の2本をまず見ましたね。あとは、撮影中に監督さんにお借りした『カル』(99年/チャン・ユニョン監督)という韓国映画を見たり。そういう資料みたいなものがないと不安だったので、いろいろと探りました。

難しかったのは、そんな役なのに、実際は普通の女子大生としての描写が続くこと。だから最初は、鈴間さんや監督さんに『このシーンでは、黒島は本当はこう思っているんですよね?』とか聞いて、細かく、細かくお話をしましたね。そして現場に入ると、『本当はこうだけど、表面上はこう見せたいと思っている』とか複雑な演出があって。だんだん、『ああ、分からない!』となっていって(笑)。それでまずは、『表面的にこう見えればうれしい』という部分を大事にしようと思いました。自分は殺人鬼だとか考えずに、ただただ普通の女子大生を演じることに徹しようと考えたんです」