フランス映画を変えた アニエス・ヴァルダ珠玉の3本恋する映画 『ラ・ポワント・クールト』『ダゲール街の人々』…

ヴァルダにしか撮れなかった景色に心が動く

続く『ダゲール街の人々』は、ヴァルダ自身が50年以上も暮らし、活動の拠点にもしていたパリ14区のダゲール通りを舞台にしたドキュメンタリー。肉屋やパン屋、美容室、香水屋といったその街に根付いた商店で生きる人々の日常に寄り添い、彼らの言葉に耳を傾けるというアニエスならではの視点と優しいまなざしを堪能できる作品となっています。

決して劇的なことが起きるわけではありませんが、それゆえに当時のリアルな空気感が伝わり、その時代の人々の息遣いが感じられるはずです。劇中では、街のカフェで出し物をする奇術師が登場しますが、彼が繰り広げる魔術と住民たちの日常生活という一見かけ離れたように見える要素でさえもうまく結びつけてしまう見事な手腕も発揮。ダゲール街をこよなく愛したアニエスだからこそ完成した珠玉のドキュメンタリー作品です。

『ダゲール街の人々』 (c) 1994 agnes varda et enfants

生涯現役であり続けた女性監督の真意

遺作となる『アニエスによるヴァルダ』は、自らの言葉で作品の魅力を語り尽くしたセルフ・ポートレート。彼女のチャーミングな人柄とユーモアに富んだ話術に、誰もがヴァルダを愛さずにはいられません。そして、創作活動に注がれてきた情熱を支えている原動力や作品に込めた思いなど、どれもインスピレーションを与えてくれる興味深いものばかり。

夫であったフランスの名匠ジャック・ドゥミ監督とのエピソードや彼女が歩んできた映画の歴史は、ヴァルダファンにとっては垂涎(すいぜん)ものですが、これまであまり彼女の作品に触れてこなかったという人でも、入門編にはピッタリとなっています。彼女自身の解説を聞いてから過去の作品を見ることで、作品への理解もより深まること間違いなしです。

『アニエスによるヴァルダ』 (c) 2019 Cine Tamaris-Arte France-HBB26-Scarlett Production-MK2 films

映画監督、写真家、ビジュアルアーティストとして60年以上活躍し、90歳になっても生涯現役であり続けたヴァルダにとって、仕事をするうえで大切だったのは、「ひらめき」「創造」「共有」の3つ。その裏にある思いは、どんな仕事にも共通するものであり、同じ働く女性として彼女の生き方から学ぶところは多いはずです。ヴァルダが残してくれた愛のある言葉の数々を胸に、新たな年を迎えてみては?

les creatures-marilou parolini (c) varda estate
『アニエス・ヴァルダをもっと知るための3本の映画』
12月21日(土)より、シアター・イメージフォーラム他全国順次公開
配給:ザジフィルムズ

(ライター 志村昌美)

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