中2の柔道の授業を見学した。担当教員は坂口諭さん。体育大学の柔道部で活躍し、灘の教員になって7年目。バリバリのアスリートであり武道家でもある。見るからに強そうだ。自分の体育の先生だったら「おっかない」と感じてしまいそうな空気を身にまとう。

「精力善用」「自他共栄」の額縁を背にして、坂口さんが仁王立ちになる。その前に約40人の生徒たちが整列し、正座する。そろって礼をして、厳かに授業が始まる。が、意外なことに坂口さんの口調はやさしい。うしろのほうでふざける生徒をたしなめるときも、体育会的な威圧感はない。

期末試験も近づいてきた時期で、翌週には柔道の実技テストがある。この日の授業はテスト対策の練習にあてられた。「亀の状態」「腹ばいの状態」「引き込みの状態」からの寝技とそれに対する返し技の攻防を審査する。

坂口さんは、生徒を2人前に呼び、それぞれの状態からの寝技のかけ方、返し技のかけ方を細かく説明する。「ひじとひざの裏をもって、こうやって返して……」。生徒2人に手本をさせる。

テストに向けて対策

技の途中で生徒同士が抱き合うような姿勢になる。説明のために坂口さんがそこで動きを止めるように指示すると、お手本の生徒の1人がすかさず相手を見つめて「大好き!」と言って、みんなを大笑いさせる。念のために付け加えておくが、灘は男子校である。

お手本を見てからそれぞれに練習する。授業の雰囲気は終始おだやかでにこやかだった。「あー、足がつった、つった!」と大騒ぎして失笑を買う生徒もいる。

あっという間の50分間。再び整列して礼をして授業が終わると、生徒の1人は「あー、次は英語のテストやー!」と叫びながら柔道場を出ていった。

体育の授業だけで約70人が黒帯獲得

灘では3年前から「学校正課柔道」のカリキュラムに準じて柔道の授業を行っている。灘で高1まで体育の授業の一環として柔道をやって、一定の技量があることを灘の柔道の先生に認められ、講道館の昇段審査に合格すれば柔道初段すなわち黒帯がとれるしくみだ。高校からの入学者もあわせて1学年約220人の生徒のうち、約70人は黒帯をとって灘を卒業する。

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灘の畳から真のグローバル人材が育つ
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