子育てと仕事両立は大変 イライラ防ぐ3つの「ない」こちら「メンタル産業医」相談室(38)

日経Gooday

親の愛情は質だけじゃなくて量も必要なワケ

この先輩ママのアドバイスは、今から思い返すと本当に貴重でした。彼女の言葉どおり、やはり子供と過ごす時間をある程度しっかり確保しておかないと、子供が放つSOSのサインに気がついてやることができないのです。

子供と過ごす時間をしっかり確保することは、やはり大事。写真はイメージ=(c) Antonio Guillem-123RF

例えば保育園や学童保育から連れて帰ってきて、ご飯を一緒に食べたり風呂に入れたりしているなかで、「あのね、今日ね、○○くんとね」と友達とトラブルがあったことをポツポツと話し出す。10代になって思春期に入ってきた頃も、食後の後片付けをしている私の背中に向かって、「実はさ、この前こんなこと言われたんだけど」と心が傷ついた出来事を唐突に話し始める。

親が何となく元気がないなあ、様子がおかしいなあと感じて「今日何かあったの?」と尋ねても、子供はすぐに心の中を話してはくれません。言語能力が十分に発達していないため、すぐに感情を言葉にすることができないのです。子供は親と一緒に時間をゆっくり過ごしている中で、少しずつ自分の気持ちをまとめながら、自分自身のタイミングが整った時にようやく言語化してSOSを出してくるのです。

我が家では私か夫が夕食以後は必ず子供たちのそばにいることにしてきたため、このSOSを早めにキャッチでき、イジメや不登校などの問題に発展するのを食い止められたことが何回かありました。そのたびに「親の愛情は質だけじゃなくて量も必要」とはこのことなんだなと痛感することしきりでした。

最近の若いママ・パパと話していると、SNS(交流サイト)やインターネットを通じて私の頃よりもはるかに多くの情報に触れるようで、「他人のキャリアや子育てと自分たちを比べてしまって、落ち込む、悩む」という声をよく聞きます。そのたびに、私は「焦らない」「比べない」とわが身を振り返りながらお伝えしています。

他人は他人と割り切って、せっかく自分たちの元に生まれてきてくれた子供との時間をできるだけ確保して、一緒に楽しく過ごしましょう。多少手抜きした不完全な子育てでも、親がそばにいて見守ってあげていると子供は安心して、スクスクとたくましく成長してどんどん手がかからなくなってくるもの。とにかく今はできるだけ笑顔で子供と過ごせるように心がけましょう。ママとパパが笑顔で一緒にいてくれることこそが、子供の心の一番の栄養になるんだからね、と。

そのためにも、親自身が「頑張り過ぎない」ことが必要です。仕事も育児も完璧に! と頑張り過ぎてママ・パパが心身ともに疲労してしまうと、余裕がなくなって笑顔が減り、表情も態度もイライラ・キリキリしてきます。すると子供だけではなく、夫婦関係にも悪影響を及ぼしてしまいます。

自分の睡眠時間と食事時間はしっかり確保

繰り返しますが、子供はママとパパが笑顔で一緒にいてくれることが何よりうれしいし、精神的にも安心するのです。ママやパパが穏やかな笑顔で一緒にいてくれるからこそ、自分の悩みを安心して打ち明けることができるのです。だからまずは、ご自身の睡眠時間や食事時間をできるだけしっかりと確保してください。

特に子供が小さい時には、衣食住の世話に多大な時間と体力がとられます。家事で手抜きできるところは手抜きし、子供だけじゃなく自分もしっかり栄養をとって睡眠を1時間でも多く確保して、とにかく体力と気力を落とさないように心がけてください。

子育て中でも認められたいと、仕事でくれぐれも無理しすぎないように。睡眠時間を削ってヘロヘロになって仕事を頑張っても、結局体を壊してしまえば、会社にも家族にも迷惑をかけてしまいます。

「子育てで大変な時は、仕事でのスローダウンも必要」と、割り切ることが大切です。自分がその時その時に確実に無理なくできる仕事を請け合い、きっちりとコンスタントにこなしていく。そして子育てをサポートしてくれている会社や周りの人たちに「ありがとう」と感謝の気持ちを忘れないようにしながら、細く長く仕事人生を続けていく。すると徐々に子供が成長して手がかからなくなり、いつの間にか仕事にかけられる時間が増えて、再び全力投球できるようになっていきますから。そしてその時、子育てのために仕事をスローダウンした経験が決して無駄ではなかったことに必ず気づけますから。

どうぞ「焦らない」「比べない」「頑張り過ぎない」の3つの「ない」を心がけて、仕事と育児の両立を元気に無理せず続けていってくださいね。

奥田弘美
精神科医(精神保健指定医)・産業医・労働衛生コンサルタント。1992年山口大学医学部卒。精神科医および都内約20カ所の産業医として働く人を心と身体の両面からサポートしている。著書には『1分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マネジメントセンター)、『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』(すばる舎)など多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ日本人に合ったマインドフルネス瞑想(めいそう)の普及も行っている。
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