山伏体験やお遍路… 歴史の物語に触れる日本遺産10選

■6位 鳥羽・志摩(三重県) 435ポイント
海女との会話・海鮮に夢中
海女小屋での語らい(鳥羽市・相差かまど)

海女(Ama)に出逢(あ)えるまち 鳥羽・志摩~素潜り漁に生きる女性たち~

豊かな漁場で女性が素潜りしてアワビやサザエなどをとる「海女漁」。世界でも珍しい漁法とともに、独特の祭事や信仰を受け継ぐのが鳥羽・志摩だ。訪日客に人気があるのは海女小屋体験。「海女さんがとった新鮮な海鮮を堪能できる『相差(おうさつ)かまど(鳥羽市)』はおすすめ。海女さんとの会話も貴重。日本人も魅了すること間違いなし」(村山慶輔さん)。志摩市の「さとうみ庵(あん)」も訪日客の利用が多い。

(1)相差かまど、JR鳥羽駅からバス約45分(2)https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story073/

■7位 山城(京都府) 390ポイント
広大な茶畑 触れて楽しむ
京都・宇治、石寺の茶畑を訪れる外国人客

日本茶800年の歴史散歩

京都府南部の山城地域は宇治茶の産地。茶の湯に使われる抹茶、広く飲まれる煎茶、高級茶として世界中に広がった玉露と製茶技術がある。石寺にある斜面一面の茶畑を眺めたり、宇治中心部の茶工房やカフェを巡ったり。時期が合えば和束での茶摘み体験やおいしいお茶のいれ方教室も。「道の駅『お茶の京都みなみやましろ村』の抹茶ソフトクリームは絶品。大阪・京都からのアクセスもいい。アジアの訪日客も多い」(山上洋平さん)。農村宿泊やカヌー体験も。

(1)石寺の茶畑、JR加茂駅からバス約20分、徒歩約15分(2)https://ochanokyoto.jp/nihon-isan/

■8位 琵琶湖(滋賀県) 335ポイント
祈りの文化 息づく水郷
琵琶湖に突き出したように立つ満月寺・浮御堂は近江八景のひとつ

琵琶湖とその水辺景観―祈りと暮らしの水遺産

日本最大の湖・琵琶湖の周辺では水を日々の暮らしに巧みに取り込んで文化や景観を育ててきた。湧き水をつかう洗い場「カバタ」や、町を縦横に走る水路は人々の生活の礎。水を敬う祭事や寺・神社も身近な存在だ。比叡山延暦寺はもちろん、琵琶湖に浮かぶ竹生島、湖面に立つ鳥居が印象的な白鬚神社、湖上に突き出た仏堂の浮御堂(満月寺)がある。「水の恵みに感謝し敬ってきた祈りの文化が感じられる。のんびり古くからの水郷を巡りたい」(横倉和子さん)。

(1)浮御堂、JR堅田駅からバス約5分、徒歩約7分(2)https://ja.biwako-visitors.jp/japan-heritage/

■9位 三徳山・三朝温泉(鳥取県) 330ポイント
身も心も清められる修行の地
国宝投入堂は険しい山道を登った先の断崖に

六根清浄と六感治癒の地~日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉~

修験道の修行の地、三徳(みとく)山の山道を進むと断崖絶壁にある「日本一危ない国宝」の投入堂(なげいれどう)に圧倒される。参拝して目や耳、鼻など「六根」を清めた後、新陳代謝が活発になるラドン泉の三朝(みささ)温泉に浸り、心身の「六感」を癒やす。「三徳山と温泉のダブルパワーでくつろげる。地元の水や素材を使った精進料理、豆腐が絶品」(黒田尚嗣さん)。座禅や写経、宿坊宿泊などもできる。

(1)投入堂、JR倉吉駅からバス約40分で、参拝登山事務所から約1時間(2)https://spa-misasa.jp/japan-heritage/

■9位 肥前(佐賀県・長崎県)330ポイント
焼き物産地の雰囲気 味わう
秋の有田陶磁器まつりの一コマ(専門店の店先)

日本磁器のふるさと 肥前~百花繚乱のやきもの散歩~

乳白色の素地に彩色が映える「柿右衛門」をはじめ、独自の技を培った日本磁器発祥の地・有田。磁器づくりは有田から三川内、波佐見、嬉野、伊万里に広がり発展。窯元の煙突や、登り窯に使うレンガや陶片を赤土に塗り込めたトンバイ塀は、陶工の里ならでは。伊万里の秘窯の里・大川内山を推す声も。「焼き物産地の雰囲気がある。西洋磁器との関係も深く、海外の人も身近に感じてもらえそう」(五十嵐匡一さん)。周辺に武雄温泉がある。

(1)有田の町、JR有田駅周辺(2)https://hizen400.jp/

テーマでつなぎ 訪日客呼び込む

「日本遺産」は、文化庁が2015年に始めた取り組みだ。建造物や史跡、地域に根付いた伝承や風習など、点在している文化財を共通のテーマでまとめて、その魅力を伝えるというもの。地域全体を面ととらえ、そのストーリー性で国内外の観光客を呼び込んで、地域を活性化することを狙う。東京五輪・パラリンピックを見据え、現在認定されている83件から、20年には100件程度まで増やす方針だ。

ランキングは何度か日本へ来た訪日客に薦めたい場所。上位には地域独自の自然や信仰、風習を背景にした「スピリチュアル(精神的)」な体験ができるものが並んだ。歴史や工芸、産業、食、交通などを共通項に、自治体をまたぐ広域の遺産も多い。既に外国人客に人気の岐阜・高山を含む「飛騨匠の技・こころ」や「忍びの里 伊賀・甲賀」を評価する声も目立った。

まだそれほど知名度が高いとはいえない日本遺産。日本人でも新たな発見がありそう。足を運べば思いも寄らない物語に出会えるかもしれない。

■ランキングの見方 数字は選者の評価を点数化。写真は1位上が浅山章、他は各遺産所在の自治体や観光協会などの提供。

■調査の方法 日本遺産83件から、文化庁の審査やフォローアップの委員を務めた丁野朗・東洋大学客員教授、山田拓・美ら地球代表取締役、矢ケ崎紀子・東京女子大学教授の助言を基に「外国人観光客にとって魅力的」な30件をリストアップ。専門家に「リピーターに訪れてほしい」「日本人にも発見がある」といった観点で1~10位まで順位付けを依頼。編集部で集計した。(河野俊)

■今週の専門家 ▽五十嵐匡一(「旅の手帖」編集長)▽池田良孝(JTB訪日インバウンド企画部)▽市川拓也(大和総研主任研究員)▽久保田美穂子(亜細亜大学准教授)▽黒田尚嗣(クラブツーリズム顧問)▽清水暁(東京法令出版企画編集部)▽ステファン・シャウエッカー(「ジャパンガイド」編集長)▽ジェフ・デイ(ジャパン・トラベル最高執行責任者)▽内藤桂子(日本政策投資銀行地域企画部)▽羽生冬佳(立教大学教授)▽村山慶輔(やまとごころ代表取締役)▽森岡順子(日本観光振興協会)▽山上洋平(ブッキング・ドットコム)▽横倉和子(日本旅行総研研究員)=敬称略、五十音順

[NIKKEIプラス1 2019年12月14日付]

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