珍味とおつまみは違う 「チーズ鱈」進化の四半世紀なとり 取締役執行役員 マーケティング・R&D開発本部長 西村豊氏(下)

新商品開発のコツは「非日常体験」

3代目の三郎社長が打ち出したのが、それまでのおつまみコンセプトをさらに発展させた「新おつまみ宣言」だ。おいしくてつまみやすいものを「おつまみ」と定義している点は同じだが、違いは常温流通にこだわらないこと。「まろやかチータラ」など、チルドおつまみという新ジャンルの開拓に力を注いでいる。

「温度が高くなると、チーズは柔らかくなりますが、チルドにすることによって、クリームチーズのような柔らかいチーズでも『チーズ鱈』に加工できます。その結果、非常に滑らかな食感にもなります」

「チーズ鱈」をより低温のチルドで流通させるメリットを、西村氏はこう説明する。消費者が食品に対して求める価値も多様化するなか、なとりが重視しているのは「感性訴求価値」だ。

「おつまみである以上、おいしくて簡便なことがもちろんです。それに加えて新規性や意外性、共感性を商品に付加することで、消費者がそれらを受け止め、嬉しい、楽しい、心地よいなどの感覚へとつながり、これが消費者にとっての価値となります。これを我々は感性訴求価値と呼んでいます」と西村氏はいう。

感性訴求価値を持った商品を生むためには、開発者自身が感性豊かでなくてはならない。そのため、マーケティング・R&D開発本部のメンバーにはなるべく「非日常」を体験させる工夫を凝らしているという。

「例えば、行ったことのないようなジャンルの展覧会へ行くとか、訪れたことのない土地を旅行するとかでもいい。チーズの担当者が和食のセミナーに参加するなど、仕事に直接関係のないセミナーや講演会に出ることも奨励しています」

「チーズ鱈」がヒットした要因を改めて尋ねた。

ロングセラーの座を保つには、消費者を飽きさせず、魅力を社員一丸で磨き続けることが大事という

「まずはおいしくて簡便につまめるという、『チーズ鱈』自体の商品力がありました。次に、それを社員全員で育てていこうという気概があったと思います。時代に合わせた味の追及を積み重ねただけではなく、営業に携わる社員一人ひとりも工夫を凝らした営業活動をしてきました。品質重視はもちろんのこと、原材料の調達や製造に関係する現場も、生産性や効率性を追求するためにかなりの努力を重ねてきています。社員全員がこの製品を育てていこうとする気持ちで取り組んできたからこそ、ここまでのロングセラーになったのではないかと思います」

一時的にヒットしても、数年で消えていく商品は数多い。新商品を生むのは一瞬の「ひらめき」でも、それをロングセラーへと育てていくためには関係者のたゆまぬ努力が欠かせないということだ。

(ライター 曲沼美恵)

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