海抜6200m 哺乳類で世界一高い場所にすむネズミ

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/12/13
ナショナルジオグラフィック日本版

南米のキジリオオミミマウスが、海抜ゼロの低地からアンデスの火山まで分布することがわかり、専門家を驚かせている。

アンデス山脈のユーヤイヤコ山の山頂付近は、生物が暮らすには最も不向きな場所の1つだ。アルゼンチンとチリの国境にまたがってそびえる頂は、標高6723メートルと、火山としては世界で2番目の高さを誇る。アタカマ砂漠の端に位置するため山肌は火星のように赤い。気温が0℃を超えることはめったにないが、太陽にぎらぎらと照り付ける地表面は、最高で30℃を超えることもある。

そのユーヤイヤコの山頂には、世界で最も標高の高い考古学的遺構が残る。それが、ほぼ完璧に保存されたミイラだ。

登山仲間でもある、米国の救急医マット・ファーソン氏と人類学者のトーマス・ボーエン氏の2人が、この山に3度足を運んだのは、この遺構を見たかったからだ。ところが、2013年、2人は思わぬ発見をする。世界一高いところに生息する哺乳類を目撃し、ビデオに収めたのだ。

発見当時の様子を振り返ってみよう。ファーソン氏は、ユーヤイヤコ山頂に至る一番良いルートの下見をしていた。すると、何かが動くのが見えた。目をやると、ネズミのような動物が雪の上を駆け回っている。

ファーソン氏がいた場所は標高6200メートル。酸素も不足し、ぼんやりしていた。ほかの何かを動物と見間違えたかのかと本気で心配したが、同氏はカメラでその動物を撮影していた。「4900メートルあたりから上には、動物なんて1つも見ていませんでした。まさか、6200メートル地点で動物を見かけることになるとは思ってもいませんでしたよ」と、ファーソン氏は当時を思い出して話した。

その後の調査で、動物はキジリオオミミマウス(Phyllotis xanthopygus)だと判明した。アンデス山脈の麓の丘陵や山々によく見られるネズミだ。海抜ゼロの低地でも目撃例はある。

ファーソン氏の映像は、このネズミの生息範囲は標高差6000メートル以上にもなることを示している。他に例を見ないほど広い範囲だ。米フロリダ州立大学の生物学教授で、ネズミが専門のスコット・ステッパン氏は、「生息できる範囲の広さは、並外れています」と話す。

キジリオオミミマウス(Phyllotis xanthopygus)は0mから6000メートル超の高地まで幅広い環境で生息可能な哺乳類であることが分かった(ILLUSTRATION BY HISTORIC COLLECTION, ALAMY)

それまで哺乳類が観測された場所で最も標高が高かったのは、オオミミナキウサギの標高6126メートル。キジリオオミミマウスは、これよりも70メートル以上高い場所で見つかったわけだ。もちろん、ヤクやバーラルが標高6100メートル付近で目撃された例はあるが、これは生息可能な範囲から外れていることがわかっている。キジリオオミミマウスの場合、目撃された個体は、そこに定着している個体群の1匹と考えられている。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2019年7月28日付記事を再構成]

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