――その共通点が、小さい企業に勤める人の割合が高いことだと。

その通りです。従業員20人未満の企業に勤める人の割合と生産性の高さを示すグラフ(下参照)を見ると、日本やスペイン、イタリアと、生産性が高い米国やドイツの差が一目で分かります。

反対に、従業員250人以上の大企業で働く人の割合を見ると、日本やイタリアは10%台なのに対し米国は約50%、ドイツは約35%に達します。「規模の経済」という言葉があるように、企業規模と生産性の高さには強力な因果関係があるのです。

――企業規模と生産性の相関性を引き起こす要因は?

最も重要なのは「賃金」です。世界のどの国のデータを見ても、企業規模が大きくなるほど従業員の給料は高くなり、小さな企業ほど低くなります。小さな企業で働く人は、大企業の人と同質・同量の仕事をしても、受け取る賃金、つまり生み出す付加価値が低くなってしまうのです。

企業の規模は、生産性の向上とも密接に関わっています。最先端技術を導入しようとすれば専門知識を持つ人材が必要ですし、海外拠点を持とうとした場合も同じです。研究開発への投資余力も不可欠です。また、人材が豊富にいれば、社員は自分の得意とする仕事に特化して高付加価値を生み出すこともできるようになる。アダム・スミスの時代から指摘されているように、組織が大きくなれば労働分割による専門性の向上が引き起こされるのです。一方で、ギリギリの資本や人材でやりくりしている中小企業には、こうした余力はないのが実情です。

――国は中小企業の生産性向上に向け、IT(情報技術)活用や働き方改革、女性活躍を推進する企業に補助金を出しています。

業務効率の悪さや長時間労働が生産性向上を妨げているという議論はよく聞きますが、それらはあくまでも小規模な企業が多過ぎるという構造がもたらした結果にすぎません。構造問題に手を着けないまま補助金をばらまいても、効果は期待できないと思います。

――中小企業庁は、2025年までに日本企業の3分の1に当たる127万社が後継者不足などで廃業し、約650万人分の雇用が失われるリスクがあると試算しています。

「企業の数が減る=失業者が増える」「企業の数は多い方がいい」というのは、人口増時代の考え方で時代錯誤です。急激に人口減が進む今の日本では、労働力は不足しているのです。国が考えるべきは、少なくなっていく労働者により生産性の高い仕事をしてもらうために、零細企業の統合を進め、人材の再配置を進めることです。

人口増時代の成功体験は捨て
持続可能な社会のための
新しいグランドデザインを描く

――ご自身も中小企業を経営されていますが、中小企業の統合促進の現実味をどう捉えていますか?

文化財修復を手掛ける我が業界は、30億円の売り上げを20社の中小企業で分け合っています。どこも経営は不安定、職人の労働条件も過酷で、極端な価格競争にも陥りやすい。非効率な産業構造を変えるため、統合の旗を振りたいと思っていますが、他社の賛同を得るのは難しいと実感しています。

しかし経営統合を進め、20社を5社にすることができたらどうか。業界の仕事量や売り上げは変わらないので、職人の仕事の需給には影響はありません。1社当たりの売り上げは増え、より高度な設備投資や労働環境の整備が可能になる。人材を育てる余裕もできて、技術の承継も促進されます。減るのは社長の数だけです。だから中小企業の統合は進まない。経営者が自分の利益を優先するからです。

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