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加齢のほかには、疲労やストレス、風邪やインフルエンザ、病気や治療による免疫の低下などが、発症の引き金になることがあります。

――若い世代でも帯状疱疹が増えているのはなぜでしょう。

最も大きな要因は、水ぼうそうにかかる子どもが減っていることです。子どもの頃に水痘・帯状疱疹ウイルスに感染すると、体の中に免疫が残るため、基本的には水ぼうそうに再びかかることはありません。ただ、その免疫は時間がたつとともに徐々に低下していくため、帯状疱疹は発生しやすくなります。

かつては多くの子どもが水ぼうそうにかかっていたので、気づかぬうちにウイルスと接する機会がありました。すると、ウイルスと接することで、低下していた免疫が高められる追加免疫効果(ブースター効果)が得られていたため、帯状疱疹の発症も抑えられていました。

しかし現代は、兄弟が減っているなど環境が変化したことによって、日常生活でウイルスと接する機会が少なくなっています。さらに、日本では2014年10月から1~2歳児を対象に水痘ワクチンの定期接種が開始され、子どもの水ぼうそうが激減しました。

そのために、以前よりも免疫の低い成人が増えていて、若年化していると考えられます。免疫の低い成人がさらに増えれば、帯状疱疹も増加していく可能性があります。

ワクチン接種で発症と重とくな後遺症のリスクを低減

――帯状疱疹はどのようにしたら予防できるのでしょうか。

日本では2016年から50歳以上を対象に、帯状疱疹の予防を目的としたワクチン接種が認められています。帯状疱疹は抗ウイルス薬で治療することができますが、治療後にも強い痛みが残ってしまうことがあり、3カ月以上痛みが持続する場合は「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれ、日常生活に支障を来すこともあります。そのために、発症が増える50歳以上を対象に、ワクチン接種が推奨されるようになったのです。

ワクチンを接種しても帯状疱疹を完全に防ぐことはできませんが、仮に発症したとしても、帯状疱疹後神経痛の発生率は3分の1程度まで抑えられるという報告もあります。帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹を発症した患者の10~30%に起こり、高齢になるほど発症するリスクが高くなるといわれています。非常に強い神経痛が残るため、一般的な鎮痛剤が効かず、痛みを専門とするペインクリニックで神経をブロックする治療を要する場合もあります。

現在使用されているワクチンは水ぼうそうと同じ水痘ワクチンで、1回の接種で予防効果が期待できます。ただ、これはウイルスの毒性を弱めた弱毒生ワクチンのため、妊婦や免疫が低下した人は接種できません。近いうちに免疫力が低下した人にも使えるタイプのワクチンが使用可能になる見込みです。ただ、このワクチンは2カ月ほどの間隔をあけて2回の接種が必要です。発症や帯状疱疹後神経痛のリスクを低減したい人は、接種を検討してみるといいでしょう。

――帯状疱疹を疑う症状に気づいた場合は、どうしたらいいでしょうか。

発症初期の皮膚の違和感やピリピリ・チクチクとした痛みで帯状疱疹を疑うこともあれば、発疹が片側に出てから帯状疱疹に気づくこともあります。いずれにしても、帯状疱疹が疑われる場合は、早めに皮膚科などを受診してください。治療に用いる抗ウイルス薬はウイルスを消し去るものではなく、増殖を抑えるものなので、ウイルスが再活性化して発疹が現れる初期を過ぎると、効果が下がることがあります。また、痛みなどの症状がひどくなると、神経の痛みが消えるまでにより長い時間が必要となってきます。そして、受診後は、しっかり体を休めることも大切です。

(ライター 田村知子)

今村顕史さん
がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長。1992年浜松医科大学卒業。駒込病院で日々診療を続けながら、病院内だけでなく、東京都や国の感染症対策などにも従事。日本エイズ学会理事などの様々な要職を務め、感染症に関する社会的な啓発活動も積極的に行っている。自身のFacebookページ「あれどこ感染症」でも、その時々の流行感染症などの情報を公開中。都立駒込病院感染症科ホームページ(http://www.cick.jp/kansen/)。

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