ホテルの限定Xマスケーキ 過去最高額なのに完売も
2019年のクリスマスはイブ、当日ともに平日。クリスマスケーキの販売ピークは、その前の週末にも広がる見込みだ。ホテルで販売される今年のクリスマスケーキを見て気づくのは、特別なオーダーメードではないものの中にも、ホテルが「過去最高」という高価格のケースが登場していること。実際、7万円というケーキもある。しかも個数限定とはいえ、11月の段階で売り切れてしまったものもあるという。
ホテルが力を入れる高価格帯のクリスマスケーキはいったいどんなものなのか。パレスホテル東京、ホテルニューオータニ東京、ウェスティンホテル東京のケーキを見ていこう。
パレスホテル東京/銀世界のトナカイをイメージ
2019年のクリスマスシーズン向けに発売される東京都内のクリスマスケーキで、おそらく最高額ではないかと思われるのが、パレスホテル東京の「レンヌ」だ。
レンヌとは「トナカイ」を意味するフランス語で、一面の銀世界とそこに悠然といる1頭のトナカイをケーキで表現したという。三角すいのホワイトチョコレートでできたトナカイを取ると、2段目のストロベリーショートケーキが現れるという演出を施している。直径32×高さ53センチ。
ベーカリー&ペストリー課シェフ兼ペストリーシェフの窪田修己さんによると、7万円という価格設定は同ホテルのクリスマスケーキでは歴代最高額だという。
「今まではだいたい5000~3万円ほどのクリスマスケーキをご用意しており、過去最高額は2016年の3万円でした。ここまで高額なものは今年が初めてです」(窪田さん)
5台限定だが、10月1日の受付開始早々に予約が入った。台数が限られていることも早く予約が入った理由ではあるが、年々予約時期が早まってもいるという。取材した11月下旬時点で、予約は残り1台となっている。
「クリスマスの楽しみ方は多様化していますが、毎年この時期しか販売されないクリスマスケーキを楽しみにしているお客様は多くいらっしゃいます。このケーキの開発のきっかけも、昨年お客様より『どこにもないようなサプライズ感のあるケーキがほしい』との要望をいただいたことからでした。パレスホテル東京だからこそ実現できる、洗練されたインパクトのあるデザインと、厳選素材のみを使用したこだわりのケーキを目指した結果、このような価格となりました」(窪田さん)
デコレーションに使った100粒のイチゴは糖分と酸味のバランスが良く非常にジューシーな栃木県産スカイベリー。それに合わせるために 栄養分や風味が優れたAOPバターをフランスノルマンディー地方から取り寄せた。そのほかの食材も、ミネラル分が多くカラメルのような深い味わいの沖縄産黒糖を用いるなど、それぞれトップクラスの素材を選び抜いた。
ただその大きさゆえの苦労もあったという。高さもあり、かなり重いケーキになってしまったため、どのようにしてケーキ本体にかかる重量を分散して組み上げるかが難しかったそうだ。
「ぜひご自由に楽しんでいただきたいですが、あえて一言加えさせていただくとすれば、スカイベリーは糖分と酸味のバランスが良く、ロゼシャンパンとの相性がとてもいいです。まずは、三角すいチョコレートの小窓からイチゴを数粒取り出し、アヴァンデセール(コース料理でデザートの前に出される小さなデザート)のようにイチゴとシャンパンのマリアージュを楽しんでいただき、口の中をリフレッシュしてからケーキを召し上がっていただければ」(窪田さん)
ホテルニューオータニ東京/人気ケーキが集結
ホテルメードのクリスマスケーキのなかでも、1万円以上のもののラインアップ数が充実しているのがホテルニューオータニ。ホテルニューオータニ東京の「パティスリーSATSUKI」では、1万2000円以上のクリスマスケーキを8種類販売する。
中でも、注目なのが「クリスマスタワー」と「スーパークリスマスタワー」だ。
どちらもホワイトチョコレートの尖塔(せんとう)の下に「パティスリーSATSUKI」でも人気の「スーパーメロンショートケーキ」「スーパーあまおうショートケーキ」を重ねている。さらに「スーパークリスマスタワー」はシフォンケーキも加わる。
土台には、ホワイトチョコレートをコーティングしたフルーツケーキとバウムクーヘンを配置。この土台部分が1段のものが「クリスマスタワー」、2段のケーキが「スーパークリスマスタワー」で、それぞれ価格は4万円と6万円となる。どちらにも高級シャンパン「ドン・ペリニヨン」を中に入れたボンボンショコラが使われ、「スーパークリスマスタワー」にはデコレーションとしてツリーのオーナメントを模したマカロンが並べられる。
「スーパークリスマスタワー」が誕生したのは2007年。「日本で一番大きなクリスマスケーキを作ろう」ということから企画された。ケーキのサイズは直径34センチ×高さ52センチで、約30人分となっている。
ベースとなっているスーパーシリーズのケーキは、2004年にホテルニューオータニ開業40周年を記念して誕生した厳選素材から作り上げる高級ケーキシリーズ。季節ごとに使われるフルーツが変わるこのケーキのなかから、最高級の静岡県産マスクメロンを使用した「スーパーメロンショートケーキ」と、博多あまおうを使用した「スーパーあまおうショートケーキ」を選んだ。
「『スーパーシリーズ』のケーキたちを集結させた、おいしさを重ねたオールスターケーキです。大人数のクリスマスパーティーでお楽しみいただければ」(ホテルニューオータニ グランシェフ 中島真介さん)
今年の予約は休日とクリスマスイブ当日の24日に集中しているという。個数を限定しての販売ではないが、早めの予約をおすすめしたい。
ウェスティンホテル東京/丸太をイメージ
ウェスティンホテル東京の2019年のクリスマスケーキは、「ウィンターフォレスト」がテーマ。最高額のクリスマスケーキ「MA.RU.TA」は丸太をデザインしたクリスマスケーキで、作り始めた4年前から毎年少しずつバージョンアップ。今年が過去最高額となった。
「MA.RU.TA 2019 チョコレートケーキ」と名付けられた今年のケーキは、15本のブラウニーを5本ずつ、ピスタチオ、チョコレート、プラリネの3種類のクリームで包み、チョコレートで丸太のようにコーティングした。それらを組み合わせた下には、アプリコットジャムを挟みこんだチョコレートでできたザッハトルテを合わせている。外側はチョコレートで作った木箱でデコレーション。縦横は20センチで、高さ30センチ。
ウェスティンホテル東京のエグゼクティブ ペストリー シェフの鈴木一夫さんによると、材料だけではなく、制作にかかる時間、それにケーキ作りにテクニックが必要な表現があるため、高価になるという。
「最初にテーマを決めてから、アイテム、デザインを決めていき、商品が完成してから、最後に値段を決めています。今年は特に、丸太をはじめとするそれぞれの木の質感など、見た目のリアル感を追求しました。丸太をひとつずつみなさまで分け合って召し上がるのがおすすめです」
予約開始日は11月1日だったが、11月下旬にはすでに、5台限定のこの商品も含めて数量限定のクリスマスケーキはすべて予約完売となっている。
◇ ◇ ◇
食材を厳選し構成にもこだわったクリスマスケーキはいずれも高額で、サイズも大きい。しかし、ホームパーティーなど、家庭内に人を呼んで集まる光景をSNSなどでシェアすることが広まったいま、「クリスマスらしさを演出するケーキは大きく、特別なものを」というニーズが増しているのかもしれない。ちなみにホームパーティーを意識してか、各ホテルでは欧米のクリスマスの定番のローストターキーなど、デリメニューも充実させている。
(文 北本祐子)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界