そして、めでたくフリーとなるわけですが、ここでフリーランスになった私が、もし会社員に戻ったらやりたいことをお話しするのも有益かもしれません。

私は会社員時代はデザイナーのチームにいて、エンジニアやディレクターの方との関わりは多かったのですが、経理や知的財産、法務や広報などの分野の方とはなかなか話す機会がありませんでした。独立して気づいたのですが、彼らが持っている知識やノウハウは大変重要であり、すべての自営業者がすべからく身に付ける必要があるものです。もっと経理部や知財部、法務部の人と仲良くなって色々教わりたかったし、他分野の仕事に興味を持っていればよかったと後悔しています。

会社員時代のスキルが大きな武器に

それから、当時は自分の業務のみに専念しており研修系のプログラムにあまり興味をもっていなかったのですが、会社のお金で勉強会や研修に参加できるなんて非常に恵まれた境遇なので、もっと積極的に勉強会を開催したり参加したりすればよかったですね。当たり前ですが自営業はスキル研さんのために使う時間にお金は出ません。会社員時代に身に付けたスキルはなんであれ独立してからの大きな武器や、飯の種になります。

キャッシュレス時代の奇祭をねらう「仮想通貨奉納祭」では企画・運営から担当した(2019年11月、東京・中野、撮影:黒羽政士)

そしてフリーになってから3年以上がたった今、次のようなことを感じています。

フリーランスというと「上司がいなくて自由気まま」というイメージを持たれるかもしれませんが、むしろある意味「世間の誰もが上司になる」のだなとよく感じています。「フリーランスをしていると、たまに不自然なほどありがたいオファーがやってくることがあるが、こうしたときは『人生のどこかで関わった方のご推薦』であることが多い」とSNS(交流サイト)でおっしゃっていた方がいました。

「義理」「人情」が重要な指針に

本当にこれはそうで、誰がどこで助けてくれるかわからない世界のため、極力、誰に対しても誠意のある対応が求められると感じることが多いです。長年フリーランスをやっている大先輩からは「フリーランスには義理と人情が必要である」という言葉をよく聞きます。

不義理はなるべく働かない、敵をむやみやたらに作らないという行動原理は、宮仕えではない野良ビジネスパーソンにとって重要だと日々実感しております。私自身も元来は適当で個人主義な人間なのですが、自営業になってからは以前に比べて「義理」「人情」が重要な指針となりました。

市原えつこ
メディアアーティスト。1988年愛知県生まれ。早大文化構想卒。日本的な文化・習慣・信仰を独自解釈し、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作。主な作品としては、大根を使った体験型コンテンツ「セクハラ・インターフェース」や、家庭用ロボットに死者の痕跡を宿らせ49日間共生できる「デジタルシャーマン・プロジェクト」(文化庁メディア芸術祭優秀賞、アルスエレクトロニカ栄誉賞)など。11月には東京・中野でキャッシュレス時代をテーマにした「仮想通貨奉納祭」を催した。 https://note.com/moja_etsuko

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