2019/12/8
内燃機関を持たない「モデル3」には、冷却用のフロントグリルも存在しない。ノーズが低いこともあり、キャビンはこんもりと高く見える

減速を終えてステアリングを切っていくと、重量配分のよさが感じ取れる。カーブでは4つのタイヤに荷重が掛かり、これが路面をしっかり捉えてから、コーナリングスピードが高くても安心感がある。旋回を終えて加速体勢に移ると、タイムラグなしに前後方向へとGが変換される。この一連の動きにまったく段付き感がないのは、極めて理想的というほかない。これで車両重量が軽ければ、まさに言うことナシである。この動きは何かに似ている。なんだろう? としばし考えて浮かんだのは、ラジコンだった。

一方で、テスラといえば運転支援も気になるところ。何より、どんなクルマよりもアダプティブクルーズコントロール(ACC)が素早く行えるのは“らしさ”のひとつだと思った。操作はカンタン、シフトレバーを2回下にクリックするだけでアクティベート。そのあまりのイージーさに戸惑いながらも、やはり便利だと感心する。車間距離や車速の調整は、ステアリングホイールのローラーダイヤルで行う。BMWや日産に先を越されたのは意外だが、「ハンズオフ」機能はなし。

車両のキーはカード型。写真のようにBピラー部にかざすことで解錠・施錠を行う

周囲の車両をアニメで示す(たまに軽トラを大型トラックと間違う)モニターアニメーションはかわいかったが、360度監視するカメラや160m前方を捉えるレーダー、超音波センサーによるモニタリングの精度は高く、今回、直線主体で緩いカーブが続く東名高速では、リラックスしながらコーヒーを飲みつつ運転する「優雅な朝の時間」を楽しむことができた。先進性に慢心さえしなければ、ACCはやはり便利で大いに魅力的だと実感する。

スタミナと操作には要注意

いい気分で走っていると、バッテリーは結構減っていた。東京を出発するときにモニターに表示されていた航続可能距離は、ほぼ満充電状態で468km。そして243.6km走った残りの航続可能距離は、なんとたったの80kmだった。合わせて323.6kmというのは、もとの468kmの7割にも満たない。箱根のワインディングを“たったの1往復”したことや、エアコンを効かせながらちょこまかと街中を散策したとはいえ、これはちょっと少ない気がする。

ともかく出発点の東京まで安心して帰ることを考えるとやはり充電は必要だということで、神奈川の大磯プリンスホテルに立ち寄り、急速充電を小一時間ほどして帰路につくことにした。ちなみにこの時点での消費電力は54kWhで、電費は22.1kWh/100km(約4.5km/kWh)だった。

サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン式でリアがマルチリンク式。エアサスは用意されない
「モデル3パフォーマンス」は、ラインナップ中で最も大きなバッテリーを搭載する。WLTPモードでの航続距離は530kmと公表される

スイッチ類の多くをタッチパネル内に集約し、モニター以外に何にもないインテリアをつくったのはひとつのインパクトだ。しかし空調や各種のモード切り替え、サイドミラーの調節といった、運転中に微調整をしたくなる部分までもタッチパネル化したことによる操作性の悪さまで「先進性」という言葉で評価することはできない。ここは先進性よりもむしろ、つくり手のコスト削減の意図が強く感じられるところであり、早期に改善してほしいと思う。

しかしながら、こうしたシンプルさはピュアEVが持つクルマとしての素性のよさとリンクしていて、モデル3の魅力となっていることも事実。かわいくないのはその717万円という価格だけだと思う。

そういう意味では、バッテリー容量が少なくなってしまうのは残念だけれど、1モーター+リアドライブのベーシックモデル「スタンダードレンジ プラス」(511万円)の方が、モデル3本来のキャラクターに忠実なのではないかと思う。

(ライター 山田弘樹)

■テスト車のデータ
テスラ・モデル3パフォーマンス
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4694×1849×1443mm
ホイールベース:2875mm
車重:1847kg
駆動方式:4WD
タイヤ:(前)235/35ZR20 92Y/(後)235/35ZR20 92Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
一充電最大走行可能距離:530km(WLTPモード)
価格:717万3000円
テスト距離:243.6km
消費電力量:54kWh
参考電力消費率:22.1kWh/100km(約4.5km/kWh)(車載電費計計測値)

[webCG 2019年11月22日の記事を再構成]

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