日本の女性活躍推進は先進国でも周回遅れといわれている。中でも役員への女性登用は思うように進まない。経営の方向性を担う取締役会も、多様な人材構成が重要だ。女性役員を巡る世界の趨勢と日本の課題を2人の識者に聞いた。
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青山学院大学名誉教授・北川哲雄さん 投資家圧力、追い風に
――日本でも女性役員比率がようやく伸びてきた。
「経営層の意識がずいぶん変わった。ダークスーツの男性が居並ぶ取締役会の風景に違和感を持つようになった。女性活躍が進んでいる企業は利益率も株価も高い傾向が明らかになっている。人材の多様性が経営上も重要との意識が浸透し、女性を登用する流れができてきた」
「ここ10年、ESG(環境・社会・企業統治)の観点から企業の成長性や経営力を見極めようとする考え方が特に欧州で浸透した。女性活躍を含むダイバーシティもその重要な要素だ。外国人投資家が投資先の日本企業に女性登用を促している。女性役員がいない会社の最高経営責任者(CEO)に再任反対を突きつける事例も聞く」
――企業にとって女性を役員に登用する意味は何か。
「男女を問わず、登用の前提は優秀な人材であることだ。性別で能力に差はないのだから、人口の半数を占める女性を登用しないのは不自然だ」
「女性は組織のしがらみに縛られない。相手の肩書も気にせず発言・行動する傾向があり、男性が思い付かないアイデアを出すこともよくあると聞く。採用されるかはさておき、忖度(そんたく)のない意見は議論を深めるきっかけになる」
――女性役員比率は今後どこまで伸びるでしょうか。
「若い世代ほど女性の新卒採用比率が高い。現時点で女性役員候補が社内に少なくても、課長手前くらいには多数の優秀な女性がいる。この層が順調に育てば今後7~8年で自然と2~3割に高まるのではないか」
「でもそこがゴールじゃない。日本企業は国内の他社を気にして、海外の競合企業に目を向けない。女性役員比率3割が先進国では当たり前だ。国内トップでも、世界に見劣りする。本気で取り組み、早く追いつかないと経営上のリスクになると意識すべきだ。そういった意味で日本は7~8年遅れている」