2019年のスーツを振り返る企画「ニュースなスーツ2019」。その2回目は快適さを軸に進むスーツの2極化やネクタイなどに着目し、リポートしよう。
TOPICS 7.
アット ヴァンヌッチ大躍進
バイヤー陣の熱視線独占
ここ10年を振り返っても、これほど脚光を浴びているネクタイブランドはアット ヴァンヌッチくらいではないだろうか。今や有名ショップのほとんどが買い付けており、カジュアル化の進む中でも驚くほど売れていると聞く。セッテピエゲの軽やかな締め心地や、フィレンツェの熟練職人による最高品質のハンドメイド。もちろんこれらも人気の理由だが、他社が決して真似できない独特の色柄表現も唯一無二の魅力だろう。代表の加賀健二氏による生地デザインはまさに秀逸の一言で、氏が大量に保有するアーカイブを参考に、長年の経験で培われたセンスで時代を先ゆくコレクションを展開。締めるだけで“わかってる”装いを築けるタイだ。
■ATTO VANNUCCI(アット ヴァンヌッチ)
・「柄出しから行う徹底した作り込みが生む、唯一無二の色柄表現が魅力」/ブリッラ ペル イル グスト ディレクター 無藤和彦さん
・「工芸品のような手縫いの技と洗練された色柄に魅了されます」/エストネーション メンズバイヤー 中森博一さん
・「ヴィンテージを基調としつつ独創的なヒネリが効いています」/ストラスブルゴ メンズ アシスタントバイヤー 佐野達彦さん
・「固定観念に囚われない“エキセントリックさ”が常に新鮮」/グジ ディレクター 岩佐淳宏さん
TOPICS 8.
クラシコイージー化加速
日本から世界へ。「快適」新標準
ピッティの展示を見ていると、イタリアの提案も年々カジュアル化が進んでいるのを強く感じる。ジャケットのアンコン化はもはや行き着くところまで行った今、変化を感じるのはパンツ。ゴムを仕込んだエラスティックウエストやドローコードパンツが目立ち、ラルディーニやタリアトーレをはじめとするクラシコ系ブランドもこぞって提案していた。日本では昨年からすでに一般化していたが、それが本国へフィードバックされ、世界向けのコレクションとして広がっているということだろう。ビスポーク的なクラシック系と、よりスポーティなイージー系。2019年は、スーツの二極化が一段と進んだ年であったと総括することができるだろう。
■左:TAGLIATORE(タリアトーレ)
ニットのような伸縮素材。パンツはベルトループ付きで、ギャザーを隠すこともできる。 15万5000円(トレメッツォ)
■右:LARDINI(ラルディーニ)
パッカブル仕様で出張時にも活躍。 13万6000円(ストラスブルゴ)
TOPICS 9.アンコンカルーゾ絶好調
Butterfly、それは今までのどんな型より軽やかに
結婚式でもお馴染みなあの歌が思わず流れてくるくらい(笑)、ハッピーな着心地だ。北イタリアらしい端正な仕立てを看板にしてきたカルーゾが手がけたアンコンモデル「バタフライ」。ご覧のとおり極めて軽快な作りだが、羽織るとアンコンとは思えないほどドレス感にあふれた佇まいとなる。写真のように平面に置いても、ラペルや肩周りなどに立体感があるのがおわかりだろう。それを可能にしたのは、長年磨き上げてきたテーラーリング技術にほかならない。カルーゾの新境地として話題をさらい、今季大注目された名品だ。
■CARUSO(カルーゾ)
端正かつ軽快な「バタフライ」モデル
TOPICS 10.
大物サルト日本上陸
ツウ感涙のレジェンド降臨
チェラートとヴェストゥルッチ、この名前を聞いてピンときた方はかなりの仕立て服通だ。前者はナポリのビスポークトラウザーズメーカーで、同地ではモーラやアンブロージと並ぶ知名度を誇る。創業者チーロの息子マルコが中核となり、昨今は世界に進出する気鋭だ。いっぽうヴェストゥルッチは、フィレンツェの伝説的サルト。高齢につき一度は引退したものの、熱烈なラブコールにより2015年に復帰し注目を集めていた。両者とも今まで日本では入手できなかったが、イセタンメンズの尽力により、今季プレタポルテでの展開が実現。チェラートは先月号の巻頭でもいち早く紹介した。新たな巨匠の参加によって、日本のサルトリアルクロージングはますます熱くなりそうだ。
■SARTORIA VESTRUCCI(サルトリア ヴェストゥルッチ)
引退から復帰したフィレンツェの巨匠
やや短めの着丈、丸みを感じさせるカットが特徴的。 ジャケット36万円/サルトリア ヴェストゥルッチ、シャツ3万6000円/ボリエッロ、タイ2万8000円/セブンフォールド(以上伊勢丹新宿店)
■MARCO CERRATO(マルコ チェラート)
ナポリパンツ最後の大物
ビスポーク同様のハンドメイドによる既製品。 16万円(日本橋三越本店)