処遇が不満 カラ経費せしめ女性に貢ぐモンスター部下
フェリタス社会保険労務士法人代表 石川弘子(5)
画像はイメージ =PIXTA
あり得ないようなトラブルを巻き起こす「モンスター部下」が最近増えているという。相談をよく受ける社会保険労務士の石川弘子氏は、その実態と対処法を近著「モンスター部下」(日経プレミアシリーズ)にまとめた。石川氏が相談を受けたモンスター部下の実態を同書から紹介する。
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創業80年の総合商社。従業員数600名ほどで日本全国、海外にも事業を拡大している。健康経営を推進しており、労働時間削減にも取り組んでいる。
登場人物
K田:30代後半の男性営業社員で上司のY川は同期入社。自分より評価が高いY川に嫉妬し、何かと反発する。母親と2人暮らしの独身。
Y川:K田と同期入社の営業所長。性格は温厚で、誠実な人柄が会社や取引先から評価されている。何かと突っかかってくるK田に手を焼くことも多い。妻と中学生の娘がいる。
N島:20代半ばの女性営業事務。事務処理能力が高く、Y川も何かと助けられている。
A本経理課長:本社経理部の40代課長。もともとは営業出身でY川の上司だった。Y川を新入社員の頃からかわいがっており、今でも時々一緒に飲みに行く間柄。
同期が部下に……。統制がとれず悩む管理職
ある日の午後、M社から営業のK田宛に注文の電話が入った。K田が外出中のため、電話に出た事務のN島が伝言を受け、その旨を所長のY川に報告した。M社はK田が先日新たに開拓した新規取引先候補だが、社内規定で新規の取引先は管理部の取引先調査が完了しないと取引はできないことになっている。確かまだ調査完了の報告を受けていなかったはずと思ったY川は、K田が営業所に戻ったところで話しかけた。
「K田さん、M社の担当から注文の電話が入ったのですが、まだ管理部の新規取引先調査が終わっていないので、ストップしてください」
K田は、じろっとY川を睨みつけると、小さく舌打ちした。
「俺が見たところ、M社は全く問題ない。どうせ管理部もすぐにOK出すんだから、このまま進める」
同期で自分の方が営業として優秀だと思っているK田は、自分よりなぜか早く出世しているY川に反発心を持っている。Y川は、同期で部下というK田のプライドを傷つけないように日頃から気を遣っているが、K田のスタンドプレーには毎回頭を抱えていた。