高級旅館も1人1室… おひとりさまツアーで気楽な旅

バスに実際に乗るクラブツーリズムの女性専用ツアー体験会

参加者全員がひとり参加という「おひとりさま限定ツアー」が、これまでに増して充実している。日程と行き先さえ決めればひとりで参加できる気軽さはそのままに、女性限定ツアーや高級旅館を楽しむワンランク上のツアーなど、内容は多彩。参加者間の交流に焦点を当てたツアーも人気だという。

参加者・添乗員、オール女性も

埼玉県に住む20代女性は7月中旬、転職前の休暇を利用して、10日間のトルコ旅行を楽しんだばかりだ。計画段階で「日程や行き先の合う友達を探すのは難しいが、完全なひとり旅では言葉や治安で不安がある」と感じた彼女が選んだのは、おひとりさまツアー。「ひとりの時間も確保できるし、ツアーなので効率よく周遊できると思った」と振り返る。

同じツアーに参加した千葉市の40代女性は「交通手段から食事までひとりで考えるのは大変。その点、ツアーは手軽だ」と話す。

クラブツーリズム(東京・新宿)は昨年、11月11日を「ひとり旅の日」として日本記念日協会に登録するなど、長期ツアーから日帰りバスツアーまで多くのおひとりさまツアーを展開している。同社第2国内旅行センターの藤田健介さんは「いくら旅を思い立っても、同行者と都合が合わねば旅行自体が頓挫しがちだ。だからといって1人でグループ客が多いツアーに加わっても疎外感を味わうかもしれない。そうした実情に合わせて生まれたのがおひとりさまツアーだ」と説明する。

おひとりさまツアーの参加者の年齢層は20~80代と幅広い。特に女性の参加が約7割と多く、中には参加者からツアーの企画者、添乗員までがオール女性という国内ツアーも存在している。

おひとりさまツアーならではの特徴は「1人1室確約」「バス席1人2席確約」の設定など、ひとり時間の確保だ。先の40代女性は「同室者がいると、友達でも洗面所や風呂を使う順番に気を使うもの。そんなストレスがないのが何より快適」と話す。クラブツーリズムの藤田さんも「自分のペースでゆったり過ごせる点」をセールスポイントにあげている。

1人参加ツアーの内容や特徴を紹介する説明会も開かれている(東京都新宿区のクラブツーリズム)

「ひとりのぜいたく」をテーマにしたプレミアムプランの設定も目立つ。予約困難な観光列車での移動や、客室に露天風呂がついた高級旅館への宿泊を盛り込んだ企画が用意されている。「通常ならひとりでの宿泊を受け付けていない宿も含まれていて、ツアーだからこそ実現できる旅」と藤田さん。

参加者同士の交流も魅力

参加者同士の交流も魅力だ。実はツアーに加わる時点で、参加者は周囲と何らかの交流を期待していることが多い。ドイツやエジプトが目的地のおひとりさまツアーに参加した経験がある大阪市在住の30代男性は「旅をしていると誰かと話したくなる。周囲が全員ひとりだとわかっているので気軽に話しかけられた。普段知り合えないような人たちと出会えるのも魅力」と話す。食事時間などに仲良くなることも多く、海外ツアーでは、自己紹介タイムなど、きっかけづくりの工夫があることも。

こうした参加者同士の交流に着目したツアーが、HIS(東京・新宿)が2015年に始めた「シェア旅」だ。同社広報室の宇佐美加奈さんは「旅先での交流、感動の共有がテーマ」と話す。

「女性限定」「ワンランク上」などのコピーが目立つパンフレット

シェア旅のひとつ「屋久島ツアー」では、参加者を対象に、屋久島をトレッキングした経験のあるスタッフが事前説明会を実施し、旅行中は参加者と地元ガイド全員が参加する夕食交流会を開く。

さらに旅行後に、ツアー参加者と現地ガイドによる「同窓会」を年1回開催。「同じ苦労や感動を味わった人が集まるので、共通体験をもとに盛り上がる」と宇佐美さん。

参加者の年齢は20~30代が中心で上は60代も。「各地から集まった様々な世代の人とつながりができた」「一人旅の方がかえって出会いが生まれる」といった感想も寄せられるという。コミュニケーションが取りやすく、メールアドレスを交換して旅行後も交流を続けている人もいる。

ひとりで旅を楽しめる気楽さと、誰かとつながりを持てる楽しさや安心感。このバランスの良さが旅好きの心を捉えているようだ。(ライター 李 香)

[日本経済新聞夕刊2019年11月16日付]