ファッションアイコンとしてリスペクトされ続ける
さて、11月6日は松田優作の命日であった。いやはや早いもので、亡くなってから30年がたったんですね。雑誌や新聞などで特集記事が組まれたり、BS放送で主演映画や主演TVドラマが特集されたり、郵便局から「探偵物語」の名シーンを収めた記念切手も発売されたりと、今またちょっとした松田優作ブームが起きているのだ。
面白いのは、ジーパン刑事を知らない今どきの若い世代の間でも、松田優作はファッションアイコンとしてリスペクトされて盛り上がっていることである。
例えば、クリエーター集団によるブランド「UNBROKEN(アンブロークン)」と、ストリートファッションブランド「DELUXE(デラックス)」がコラボして、ハリウッドデビュー作にして遺作になってしまった映画「ブラックレイン」の松田優作をモチーフに使ったフォトTシャツ、フォトスエット、フォトフーディーを発売している。正直、筆者はどちらも知らないブランドだが、「バーニーズニューヨーク新宿店」や若者に人気のスニーカーセレクトショップ「アトモス」などで限定発売されている。
モチーフに使われているフォトは、松田優作演じるヤクザ佐藤が小指をナイフで切って「ああん?」と言う、ハリウッドを「何者だ、このアクターは!?」と驚かせたインパクト抜群の登場シーン。ちなみに筆者はブラックレインでがんを隠し通してみせた狂気に満ちたこの演技を、勝手に「白目演技」と呼んでおります。
若い世代にとっての松田優作といえはこのブラックレインと、もうひとつ「探偵物語」である。筆者などはちょうどリアルタイムで見ていたが、再放送や木村拓哉やとんねるずのパロディーで知ったという人が多いらしい。ちなみに松田優作の「探偵物語」には、デビューしたばかりのアイドルだった薬師丸ひろ子と共演した角川映画の「探偵物語」もある。こちらは工藤俊作と全然違い、こざっぱりと短めに整えた髪形でサングラスもなし。DCブランド風のスーツをさりげなく着こなして、薬師丸ひろ子から「探偵さん」と呼ばれる、ものすごくコンサバな松田優作である。
主人公の工藤俊作は自由とユーモアを愛する私立探偵。いつも黒もしくは白の裾が若干フレアのコンポラスーツスタイルで、黒のスーツの時には赤いシャツに白タイか、青いシャツに青タイ。白いスーツの時には黒いシャツに赤のタイ。ベルトはせずにサスペンダーで、ソフト帽にサングラス。冬場はこのスタイルにベージュのダウンジャケットを羽織る。愛車のベスパP150Xをノーヘルで乗る。たばこはキャメルで、カルティエのライターの火力をマックスにして吸う(この吸い方を真似して眉毛を焦がした人多し)。寝る時にはピンクのパジャマにアイマスクをして眠る。コーヒーにはミルクと砂糖を入れない主義で、ブレンドにうるさくて自分で淹れて飲む。シェリー酒と酪農牛乳も愛飲する。聞き込みにはマイク付きテープレコーダーのマイクを相手に向けて話す…etc。

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