子の死を悼むカバ、悲嘆行動を初確認 ボツワナにて

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

2018年9月、アフリカ、ボツワナのチョベ国立公園で、朝から野生動物を観察していたビクトリア・インマン氏は、いつもと何かが違うことに気付いた。

時刻は午前6時45分。チョベ川の近くの池には25頭のカバがいる。しかし、この日に限って、池にはカバが1頭もいないように見えた。そして、水面には何かが浮いている。

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で生物学を専攻するインマン氏は、浮いているのが幼いカバの死骸だとすぐにわかった。生後6カ月ほどだろう、ブタほどの大きさの子カバの亡きがらだったのだ。

突然、1頭の雌のカバが現れ、慌てた様子で死骸に泳ぎ寄った。インマン氏は池から離れて観察することにした。最初はこの「悲しみ、混乱した」雌のカバ(おそらく子カバの母親)だけだったが、その後群れのすべてのカバが加わり、11時間にわたってナイルワニを追い払いながら子カバの死骸を水に浮かせようとする様子を目撃したのだ。雌のカバは、何度も子カバの死骸に泡を吹きかけていた。カバ同士の一般的なコミュニケーション方法だ。

インマン氏は2019年5月、学術誌「African Journal of Ecology」に上記のカバの行動に関する論文を発表。彼女は「雌のカバが懸命に子カバの死骸を水面に浮かせようとする様子は、息をしていてほしいという気持ちの表れのように見えました」と当時を振り返って話した。

彼女の研究は、カバの悲嘆行動を科学的論文にした最初のもので動画もある。

動物が病気やけがをした仲間の個体や、死んだ個体の世話をする介護行動は、ヒトや大型類人猿のほかに、ゾウ、ペッカリー、シャチなどで知られている。

悲嘆行動は高い社会性がある動物に特によく見られるもので、カバも社会性をもつ。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2019年6月24日付記事を再構成]

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