2019/11/12

修羅場こそ成長の源泉

ドロップボックスのヤミニ・ランガンさんは子育てと両立しながら世界中を駆け巡った

修羅場は胆力を磨く機会となる。ドロップボックスの最高顧客責任者、ヤミニ・ランガンさん(46)が成長したと実感した仕事は2つある。ソフトウエア大手、SAPで子育てとの両立に四苦八苦しながら、ブラジル、中国、インドなど世界中を駆け回ったことが一つ。その後勤めた人事クラウドソフトウエア会社、ワークデイでの営業体制構築が残る一つだ。株式公開に伴い、社員は900人から一挙に5000人に膨れあがった。その中でランガンさんは「早く成長したい」と考える人材を積極的に採用し、最前線に立ってもらった。営業チームが稼ぎ出した利益は公開前の4倍に達している。

「成功し続けたいなら、変化を受け入れよう」と部下に説き続けるアドビのアシュレイ・スティルさん

アドビのバイスプレジデント、アシュレイ・スティルさん(43)は、39歳のとき不振事業の再建を任された。「早く利益をあげろ」というプレッシャーの中で、売り込み先をコカ・コーラ、電通、ナイキなどに定めた。誰もがワクワクするような大手企業を顧客に掲げることで、部下の士気を高める作戦だ。

顧客開拓の武器もつくった。「早く大量にビジネスコンテンツを作りたい」というニーズに応えるべく、大量の文章でも一つ操作をすればロゴの色をすべて変えられるような仕組みを構築。製品はこれまで2年ごとにアップデートしていたが、今は毎日、毎週と間隔を大幅に短くしている。220人いる部下を「成功し続けたいなら、変化を受け入れよう」と鼓舞する。

子育てと仕事を両立する

子育てと仕事の両立は世界共通の課題である。4人の子どもの母であるドロップボックスのリンフア・ウーさんは、3~4人目となる双子を出産した直後、罪悪感にさいなまれた。「働いてばかりで、一緒にいる時間がない」。思い切って仕事を辞めて専業主婦になったものの、1カ月もしないうちにつらくなった。仕事が生きがいと気づいたのだ。

「えーまた仕事するの。学校の行事に来てくれないのはママだけだよ」と口をとがらす子どもたちに、「ママは仕事が好きだ」ということをよくよく言い聞かせたという。成長した大事な経験だったとウーさんは振り返る。

ウーバー・テクノロジーズのボウ・ヤング・リーさんは午後6時には帰宅して、2人の子どもと夕食をともにして、その後テレワークをする

一方、企業も変わってきた。アプリ配車サービスを手掛けるウーバー・テクノロジーズは、テレワーク、フレックスタイム、ジョブシェアリングなど様々な制度を用意する。チーフ・ダイバーシティ&インクルージョン・オフィサー、ボウ・ヤング・リーさんは午後6時には帰宅して、2人の子どもと夕食をともにして、その後テレワークをする。

彼女たちはリーダーとして必要な条件として、「インテグリティ」「オーセンティック」を挙げた。日本語に訳すなら、誠実で、全人格的。リーダーであり、会社の同僚であり、家庭人である――、大切にすべきことはすべて地続きだという。

世界最先端の技術を競うシリコンバレーで活躍するには、リーダーとしてビジョンを構築して部下をけん引するのは当たり前。根幹にあるのは、もっと普遍的なものだと、女性エグゼクティブたちは語る。

(淑徳大学教授、ジャーナリスト 野村浩子)