ベンツAクラス セダン 走り静寂、魅力は「C」に肉薄

2019/11/17
「A250 4MATIC」の4WDは前輪駆動ベースの可変トルク配分型で、100:0~50:50の間で、シームレスに前後の駆動力配分が変化する

非常に高い静粛性

走ってみると、どんな状況でも静粛性が非常に高いことに気づく。加速すればそれなりにエンジン音は高まるが、気に触るような音質ではない。街なかでも高速巡航でも、ずっと静かなのだ。ロードノイズや風切り音も含めて、徹底的に雑音がシャットアウトされている。アイドリング時でも車外に出ると結構ガサツなエンジン音が聞こえるので、遮音技術が優れているということなのだ。

2リッターターボエンジンは、十分なパワーを提供する。小型セダンにとっては必要以上と言ってもいいくらいだ。高速道路の料金所ダッシュでは目覚ましい加速を見せ、追い越しも何らストレスを感じないまま安全に完了する。7段DCTはドライバーの意思に忠実で、アクセルペダルを踏み込むと瞬時にシフトダウンしてくれる。センターコンソールに位置するスイッチでパワーモードを選択すればなおさらだ。通常はエコやコンフォートのモードで走っていても力不足を感じることはない。

最高出力224PS、最大トルク350N・mを発生する「A250 4MATIC」の2リッター直4ターボエンジン。他のグレードには最高出力136PSの1.3リッターターボが搭載される

アダプティブクルーズコントロール(ACC)も優秀である。前が空いた時に加速に移るまでのインターバルは短い。もちろん全車速対応で、渋滞でも使える。ただし、ストップ・アンド・ゴーを繰り返す状況では、少々ギクシャクすることもある。DCTとの組み合わせだから、微速での制御はあまり得意ではないようだ。

乗り心地は硬めではあるものの、不快な突き上げは抑えられている。セダンなのだから、乗員の快適性を犠牲にして運動性能を優先するのは本末転倒だ。実用的な乗り物という立ち位置は意識的に守られている。

MBUXは発展途上

実用性ということでは、バック駐車が容易だったことにも触れておこう。初めて乗った時は感覚がつかめず、苦労するモデルも珍しくないのだ。コンパクトなサイズであることも要因の一つだが、それだけではない。ミラーの位置や角度などに、自車の位置を把握しやすくする工夫がなされているのだろう。加えて、バックモニター画像の解像度が高いことも貢献している。クリアな映像のおかげで後方確認がしやすいのだ。

せっかくなので、「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)」も試してみた。AIを用いた自然対話式音声認識機能を持つ対話型インフォテインメントシステムである。日本語対応しているからなのか、「Hi,Mercedes」と英語っぽい発音でなくても「ハイ、メルセデス」と呼びかければ起動する。定型文だけではなく、会話的な呼びかけにも対応していることが自慢だ。

「MBUX」の音声認識機能は、自然な対話形式でコミュニケーションできることを重視。ただし、現時点では対話の“自然さ”も、音声で操作できることの幅もいまひとつという印象だった

「今の気温は?」と聞くと、すぐさま外気温を教えてくれた。ほかにいろいろ試してみたいと思ったが、何を聞いたらいいのだろう。「今何時?」と聞いてみたら、エアコンの設定温度を下げられてしまった。「違うよ」と言っても反応しない。「今日は何月何日?」と聞くと、「その質問には対応していません」とクールな返答。『ナイトライダー』の「ナイト2000」のようなシャレた会話はムリである。人間側もクルマ側も、コミュニケーション能力を高めていかなければわかりあえない。

MBUXにはまだ進化の余地があるが、走る・曲がる・止まる、そして快適性、使い勝手のよさというクルマの基本性能は盤石である。Cクラスのスキのなさはため息が出るほどだが、Aクラスはセダンの登場でかなり肉薄したように感じられた。FFの恩恵で、Cクラスよりサイズが小さいのに十分な室内空間が確保されていることは大きなアドバンテージである。このライバル関係がメルセデス・ベンツというブランドにとってどんな意味を持つのかは判断できないが、ユーザーにとっては選択肢の増加は歓迎すべきことだ。

(ライター 鈴木真人)

■テスト車のデータ
メルセデス・ベンツA250 4MATICセダン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4550×1800×1430mm
ホイールベース:2730mm
車重:1560kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:224PS(165kW)/5500rpm
最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1800-4000rpm
タイヤ:(前)205/55R17 91W/(後)205/55R17 91W(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:12.9km/リッター(WLTCモード)
価格:485万円/テスト車=599万1000円
オプション装備:レーダーセーフティーパッケージ(25万円)/ナビゲーションパッケージ(18万7000円)/アドバンスドパッケージ(20万8000円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(26万円)/パノラミックスライディングルーフ<挟み込み防止機能付き>(16万6000円)/メタリックペイント(7万円)

[webCG 2019年10月31日の記事を再構成]

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