「ミュージカル俳優イロイロ」を伝えたい(井上芳雄)
第55回
井上芳雄です。10月21日に放送された『有田哲平と高嶋ちさ子の人生イロイロ超会議SP』に出演しました。バラエティー番組に出た話はこの連載でも何度かしましたが、今回はミュージカル俳優の男女6人が集い、トークだけでなく、最後に豪華なセットでスペシャルメドレーを披露するという内容でした。僕としては満を持してともいえる企画でもあったので、その舞台裏を紹介しようと思います。

『人生イロイロ超会議』は、あるテーマにそって集まった芸能人が、MCの有田哲平(くりぃむしちゅー)さん、高嶋ちさ子さんと語り合うトークバラエティーです。その日はミュージカル俳優が集まって、「ライバルは?」「恋愛は?」「お金は?」といったミュージカルに対する世間の疑問にすべて答えるという内容でした。出演したのは中川晃教君、浦井健治君、ソニンさん、宮澤エマさん、北乃きいさんと僕の6人です。
僕が今まで出たバラエティーは、単発というか、そのつど打ち合わせをして、そこで出てきたネタをしゃべることが多かったのですが、今回はちょっと違った流れでした。以前、『有田哲平の夢なら醒めないで』という深夜番組に出させていただいたことがあって、そのプロデューサーの方が舞台をよく見に来てくれるようになり、『夢なら醒めないで』が終了したあと、「『人生イロイロ超会議』を始めたので、いつか出てください」という話をいただいていたんです。
プロデューサーの方が言うには、ミュージカル俳優がバラエティーに出ると、急に振られて即興で歌うことがあるけど、それだけで終わるのはもったいないから、ちゃんと歌うところも見せたい。トークが面白おかしいだけじゃなくて、本業の姿をきちんと伝えたいんだと。そう言っていただき、僕も同じような思いを抱いていたので、ありがたいなと思っていました。でも、なかなかタイミングがあわなくて、ようやく今回実現したというわけです。なので自分としては、満を持してともいえる企画ではありました。
番組では実際、最後に歌のコーナーをつくっていただきました。セットの後ろ半分が舞台になっていて、オーケストラが入って、そこで出演者のそれぞれが歌を披露しました。僕は中川君と一緒に、ミュージカル『モーツァルト!』から『僕こそ音楽』を歌いました。
すごく楽しかったし、ちゃんとオケがいて歌ったからこそ出せるクオリティーだったと思います。そこに至るトークでも、中川君と僕はかつてダブルキャストでモーツァルトの役を演じたライバルで、最初はやっぱり仲良くなれなかったけど、終わったら仲良くなって、みたいなことを話した後でのデュエットだったので、本来はソロの曲を2人で歌う意味のようなことも伝わったと思います。とても丁寧につくっていただきました。
バラエティーで歌の舞台を作ってオケを呼んでとなると、予算も普段より多くかかったと思います、歌をちゃんと見せるというのは大変なことなんだと、あらためて思いました。
ミュージカルを知らない人にも分かるように
トークでは、僕自身はいつもながらのプリンスネタや嫉妬ネタを話したのですが、ミュージカル俳優の中で一番年上だったので、自分の話よりもみんなの話をどう盛り上げられるかに集中しました。突っ込んでみたり、「それって普通じゃないよね」とミュージカルを知らない人にも分かるような目線でしゃべってみたり。出演者同士の恋愛事情になると、やっぱりみんな引き気味になるから、「僕は発展しました」と身を切って、自分から言ったり。そういうことは、自分でも頑張ったと思います。
個人的に心残りなのは、浦井君をもっともっと面白く見せたかったのですが、そこは僕の力不足でもありました。浦井君はミュージカル界で1、2を争う天才的なボケなんです。でも、テレビに出てもボケ倒したりしないし、ラジオでも浦井君が1人でボケていて、ツッコミがない。じゃあ、僕が一緒に出るときは、と考えていたのですが、思ったようにはいかないものですね。まあ、浦井君自身、そんなことをされてうれしいかどうか分からないですけど(笑)。
出演者の6人はあの場に初めて集まったので、僕もそうですが、場慣れというかリラックスしてやることがいかに重要で難しいか、ということを学びました。
そんなことも含めて、番組を見ていただいた方には、ミュージカル俳優の人となりを多少なりとも知ってもらえたのではないでしょうか。番組のタイトルじゃないですが、ミュージカル俳優にもイロイロなタイプがいて、それぞれが魅力的だということが伝わっていればうれしいです。そして、こんな人たちが出ている舞台を見てみたい、と思ってもらえたら……続きは、ぜひ劇場で。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第56回は11月16日(土)の予定です。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。