米IT大手は実験で進化する ハーバードが考える王道ハーバードビジネススクール教授 ステファン・トムケ氏(中)

画像はイメージ=PIXTA
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世界トップクラスの経営大学院、ハーバードビジネススクール。その教材には、日本企業の事例が数多く登場する。取り上げられた企業も、グローバル企業からベンチャー企業、エンターテインメントビジネスまで幅広い。日本企業のどこが注目されているのか。作家・コンサルタントの佐藤智恵氏によるハーバードビジネススクール教授陣へのインタビューをシリーズで掲載する。ソニーのV字回復を教材にしたステファン・トムケ教授が長年取り組んできたのは、イノベーションと実証実験についての研究だ。

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ビジネス実証実験の力を研究

佐藤 新刊「実験は効く:ビジネス実証実験の驚くべき力(EXPERIMENTATION WORKS: The Surprising Power of Business Experiments)」が2020年2月にアメリカで発売されます。この本を書こうと思ったきっかけは何でしょうか。

ハーバードビジネススクール教授 ステファン・トムケ氏

トムケ 私はこれまで長らくイノベーションと実証実験について研究してきましたが、「市場テストを行わなかったがために失敗してしまった」というビジネスリーダーをたくさん見てきました。リーダーとして成功するためには、いまや実証実験は欠かせません。新しい製品、新しいサービス、新しいビジネスモデル、新しいテクノロジーが成功するかどうかは実際に市場に出して試してみないとわからない時代なのです。

その理由は、消費者行動を事前に予測するのが非常に難しいことです。現在、新しいビジネスの失敗率は高くなるばかり。特にオンラインにおいては高く、新しいビジネスの約90%は失敗するといわれています。

人間の消費行動はとても複雑です。物理学の万有引力の法則のように「こうすれば、こういう結果が出る」というような公式はありません。そのため企業は行動心理学、社会学、脳科学などを駆使して消費者行動を研究したり、グループインタビューを実施したり、市場調査のデータを分析したりして、何とかして消費者行動を把握しようとしてきました。ところがどんなに最善の準備をして新製品やサービスを出しても、失敗してしまうのです。

そこで私は「そういうことをやるよりも、少しだけ実験してみるほうがよいのではないですか」と提案したいと思い本書を執筆することにしました。新しい製品やサービスを消費者が気に入るかどうかを知るには、実際に市場で試してみるのが一番だ、ということは明らかな事実なのです。

佐藤 私は日本とアメリカ両方のテレビ局で勤務したことがありますが、日本のテレビ局が番組の試作版(パイロット版)を製作しないで、いきなり市場に出してしまうのにはいつも驚いています。なぜ数億円、数十億円もの大きなリスクをとる前に小さなテストをしないのでしょうか。

トムケ そこには根本的な問題があります。ビジネスリーダーは自分自身の経験と直感によって決断を下す傾向があるのです。その決断が間違っている確率が高いにもかかわらずです。

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