アマゾンが完全ワイヤレスイヤホン その真意は?西田宗千佳のデジタル未来図

9月25日に発表会が行われた米シアトルのアマゾン本社隣にある「The Spheres」
9月25日に発表会が行われた米シアトルのアマゾン本社隣にある「The Spheres」

米アマゾン・ドット・コムは2019年9月末、米国で新製品発表会を開き、19年末から20年に向けたハードウエア新製品を公開した。そのうちいくつかは日本でも発売になる。ここでは特に、2つのオーディオ製品についてご紹介しよう。これらは必ず、日本でも注目の製品になるはずだ。

「空間オーディオ」を低価格に実現するEcho Studio

アマゾンのハードウエアといえば、多くの人が思い出すのは、Kindleのような電子書籍リーダーか、テレビ向けの「Fire TV」、そして、スマートスピーカーの「Echo」シリーズではないだろうか。

筆者が今回特に注目したのは、日本でも12月5日に発売が開始される「Echo Studio」(税込み2万4980円)だ。

「Echo Studio」(税込み2万4980円)。日本でもすでに予約が開始されている

音声アシスタントである「Alexa」を使うためのデバイスであるスマートスピーカーは、ある意味で成熟期を迎えている。そもそもシンプルなハードウエアであり、差別化要因も少ない。音声だけでは使いづらい側面もあるので、昨年からは、ディスプレー付きの製品も増えてきた。

一方、今回「Echo Studio」で強調されたのは、スマートスピーカーの基本機能である「オーディオ」を見直そう、ということだ。

もともとスマートスピーカーは、ストリーミング・オーディオ時代にはラジカセやステレオセットのような「リビングで音楽を気軽に聞く」デバイスの代わりを務めるもの、として世に出た。今はスマートホームを含めた、より広汎な用途に向けた製品になっているが、やはり一番の用途は、米国でも日本でも「オーディオ」機能だ。

アマゾンは新デバイスの「Echo Studio」で、スマートスピーカーによるオーディオ体験を「ハイデフ」「空間オーディオ」に拡張しようとしている。

空間オーディオは、音を立体的に再現する技術のことを指す。空間オーディオでは音は自分を中心にした「立体空間の様々な場所」から鳴るもの、としてデータ化されている。例えば、自分の右上に鳥がいるとすれば、そこに「鳥」という音源が配置され、同様に足元に川が流れているとすれば、足元に「川」という音源がある、と思えばいい。音楽の場合には、ボーカルや各楽器の位置が指定される。それをソフトウエアで処理し、部屋の中を音が反響した結果として、自分の耳には「立体的に音が聞こえる」のが空間オーディオだ。

現状では、「ドルビー・アトモス」という規格が映画やゲームで広く使われているが、空間オーディオはもちろん音楽にも使える。ソニーは「360 Reality Audio」という空間オーディオ配信システムを開発し、音楽配信事業者に提供を開始した。実はアマゾンもそのうちの一つで、「Echo Studio」を使うことで楽しめるようになっている。

「Echo Studio」は1つのボディーで立体的な音場を作り上げる。超高級スピーカーの持つような体験は再現できないものの、安価に「音に包まれる」体験を提供できる。ソフトウエアの力による差別化だ。アマゾンもかなり力を入れており、同時に、空間オーディオを含む高音質音楽の聴き放題サービス「Amazon Music HD」をスタートした。それだけ戦略的に重要な製品であることがわかる。

Echo Studioのスケルトンモデル。内部に複数のスピーカーを配置し、そこからの音をソフトでコントロールして、立体的な音場を作り上げる
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