就活の一歩 長期インターンの不安や疑問、これで解消
短期から中期のインターンは、主に大学3年生が夏休みや春休みなどに参加する、1日から長くて2週間程度のもの。企業は採用活動と直結させている。一方の長期インターンは学生が企業の戦力の一人として数カ月以上働き続けることを想定している。短期インターンは無給がほとんどなのに対し、長期インターンは有給が基本だ。
では早速、よくある5つの疑問の答えを、長期インターン経験者やインターン仲介サイト運営会社への取材で探ってみよう。
特別なスキルがなくても大丈夫?
長期インターンはプログラミングやデザインなど高度なスキルがないとダメなの?というのはよくある誤解だ。
もちろんITの知識が生かせる仕事は多いが、ほかにも営業やマーケティング、編集、ライティングなど学生に求められる仕事は多岐にわたる。
明治学院大学2年の野口響さんは今年4月から、長期インターンの仲介サイト「キャリアバイト」を運営するアイタンクジャパン(東京・新宿)で、営業の仕事をしている。オフィスから電話やメールで企業にアプローチし、インターン生の募集を持ちかける仕事。野口さんがアポイントを取ると、営業担当の社員が営業に出かける流れだ。
見事に商談が成立した案件もある。「最初は会話のマニュアルを見ながら話すのが精いっぱいだったが、最近は『僕自身もインターン生です』といった雑談からアプローチするなど、営業の工夫もできるようになってきた。インターン生に求められているのは高度な技能ばかりではないし、営業をやってみて意外と自分にもできるかもしれないと思えたのが、大きな収穫」と手応えを感じている。
1、2年生のうちは学校が忙しいけど両立できる?
野口さんの働くアイタンクジャパンの藤原義人社長は長期インターンの仲介サイトを運営しており、事情に詳しい。その藤原社長に聞いてみた。
「短時間勤務や週1日のみ、週末のみという働き方ができる企業も少なくない。うちの仲介サイトでも例えば『空きコマ勤務OK』『17時以降』という条件で検索できる」という。また、別の長期インターン仲介サイトInfrAでは「週3日以下」「土日だけOK」「1カ月からOK」といった条件もつけられる。
障害者の就労支援や教育事業を手がけるLITALICO(リタリコ)の子ども向けプログラミング教室でインターンとして働く柏木梨佐さん(慶応大学1年)は、大学の授業に加え、ラクロスの部活動にも参加しており多忙だ。それでも、週3日ほど夕方の空いた時間帯に教室で子どもたちと一緒にプログラミングやロボット作りをする。
「授業も部活もこなしながらでも、時間帯を自分で選べることで問題なく働けている。大学でもロボットを研究したいと思っているので、教室のインターンは自分の勉強にもなって楽しい」と目を輝かせる。
将来の仕事にどう役立つの?
「社会人になってから『ものおじしないね』とよく言われました」と話すのは、立命館大学在学中に人材教育関連のベンチャー、アントレプレナーファクトリー(大阪市)でインターンを経験した荒木優子さん。
荒木さんは、関西のベンチャー企業を盛り上げるために経営者を呼んで話をしてもらうイベントの運営や登壇者のアテンドを任された。インタビューや記事執筆までこなした。高校時代に海外留学した経験を生かし、英語プレゼンテーション講座を発案して実現したこともあった。インターンの経験から人材業界に興味を持ち、東京で希望の人材派遣会社に就職できた。
荒木さんは「大学時代にインターンを経験して、多くの社会人と接し、相手のニーズをヒアリングした上で提案する力を培えたことが、社会人になってかなり役立ちました」と振り返る。
東京で働いていた荒木さんだが、いつか故郷の関西に帰りたいと考えていた。「東京でがむしゃらに働き営業成績で表彰されたりしたけれど……」。遠距離恋愛をしていた大阪在住の男性と結婚したのを機に、インターン先だったアントレプレナーファクトリーの嶋内秀之代表に連絡してみたところ「戻ってくれば?」と誘われ、今は古巣で働いている。
何年生から始めるといいの?
大学の4年間は長いようであっという間。世の中の流れは通年採用に向かっており、就活が本格化する時期は早まるばかりだ。長期インターンのような経験は大学1、2年で始めておくほうがよいかもしれない。多くの大学生が就職活動を始める3年生までに、自分の将来展望を描けるメリットもある。
実際に1年生で長期インターンに応募したばかりの、法政大学1年の男子学生。まわりの友人からは「もう始めるの?」「(意識の高い)『意識メン』だなあ」と驚かれるというが、意に介さない。「1年生だとまだ、『長期インターンってよくわからない』という学生が多いけれど、自分は在学中に起業をしたい。それならばインターンでスキルを身につけたほうがいいと思った」と1年生のうちに決断した理由を話す。
また、2年生のときからIT系の企業数社でインターンをしていた専修大学4年の野村恵永さんは、「早くからインターンで現場を見られたおかげで将来の展望をはっきりと描けた」と強調する。
野村さんはインターンを始める前に法曹関係のアルバイトをしており、そのときに目にした書類作業の非効率ぶりが頭に残っていた。「書類を紙に印刷してハンコを押して、という作業をいまだにしていて……」(野村さん)。その後、IT企業でインターンを経験することで、法曹業務にIT技術を掛け合わせて仕事を効率化するリーガルテックの分野で起業しようと思い至ったという。
野村さんは、「社会人とのつながりができて実際に会社や仕事を早めに見ることができたのがよかった」と話す。就活が本格化する3年生の時点では既に、将来の仕事に対するスタンスがはっきりしていたため、無駄な就活もしなかったという。
地方の学生にもチャンスはある?
残念ながら、長期インターンの募集は首都圏や近畿圏の一部に集中しているのが現状のようだ。InfrAを運営するTraimmu(東京・渋谷)の高橋慶治社長は「地方の学生からも問い合わせがくるが、あまり紹介できる案件がなくて残念」と悔しがる。ただ、職種によるが、在宅やリモートでの勤務がOKというインターンもあるので諦めずに探してみよう。
(藤原仁美)
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