90年代、インターネットの普及とともに、「クッキー」という概念が生まれました。クッキーとは、ウェブサイトの利用者のコンピューターの中に訪問履歴のデータを蓄積していく仕組みのことです。これもまさに「内部計装」と同じ考え方です。この「データの蓄積と分析」は、インターネットの成長とともに、ますます重視されるようになっています。

ゼネラル・エレクトリック(GE)など、産業機器を製造するメーカーは、ガスタービン、飛行機のエンジン、発電装置などに内部計装の考え方を取り入れました。つまり広範囲にわたってパフォーマンスをモニターできる装置を内部に実装したのです。現在、GEは、より洗練されたソフトウエアを使って、製品の劣化状態を把握したり、潜在的な問題を予知したりしています。

佐藤 GEのほかに同じような目的でAIを活用している企業はありますか。

シー たとえば、世界的な昇降機メーカー、フィンランドのコネ社は、IBMワトソンのIoTプラットフォームを使っています。ワトソンは各エレベーターについているIoTセンサーを常に分析し、潜在的な問題を検知したら、不具合が起こる前に、保守担当者に症状を報告してくれます。

アメリカの航空機エンジンメーカー、プラット&ホイットニーのギヤード・ターボ・ファン・エンジン(GTFエンジン)にもAIが実装されています。1つのエンジンには400万のデータポイントがあり、1秒飛行するごとに1テラバイトものデータが得られます。エンジンを動かすごとに、タービンブレードなど部品が少しずつ摩耗していきますが、このデータを利用すれば、潜在的な問題を予知することができ、早めにメンテナンスをすることができるのです。

日本人はAIを恐れすぎ?

佐藤 AIは人間の仕事の補助的役割をしてくれるけれども、人間の代わりにはならない、ということですね。

シー 日本では多くの人々が「私の仕事はいずれAIに取って代わられる」とか、「日本は人手不足だからAIを搭載したロボットで何とかしなければ」などと、あれこれ心配しているのを目にします。実際、日本人はアメリカ人よりも、「AIがもたらす未来」について強い関心を抱いていると感じます。しかしながら、アメリカの大企業を見ても、AIができることは限られていますし、AIを搭載したロボットが、トヨタウェイを完璧に学ぶことなどできないのです。

(中)20年も前から「IoT」、データが生むコマツの競争力 >>

ウィリー・シー Willy Shih
ハーバードビジネススクール教授。専門はマネジメント。特に製造業と製品開発について研究。同校にて人気講座「成功する企業の設立と持続」を教える。IBM、イーストマン・コダックなどを経て、現職。トヨタ自動車、コマツなど、日本企業に関する教材を多数執筆。2009年にハーバード・ビジネス・レビュー誌に発表した論文「競争力の処方箋」は、マッキンゼー賞を受賞した。主な著書に「Producing Prosperity-Why America Needs a Manufacturing Renaissance」(共著、Harvard Business Review Press)

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