社員が個人事業主に タニタの改革が合理化でない理由タニタ流「働き方改革」(1)

一般にフリーランスとしてやっていくには、収入の不安定さを覚悟しなくてはならないが、活性化プロジェクトでは、独立後もタニタの業務に関わってもらうのが前提。少なくとも当初の3年間は、タニタの仕事を請け負えるよう保障する。その間に、仕事の幅を広げるための勉強をしたり、社外の仕事を少しずつ請け負ったりしながら地固めをしてもらう。その後は、タニタの仕事と他社の仕事をどういう割合で請け負うかは本人次第だ。

とはいえ、これまで会社員として働いてきた人にとって「退職」のインパクトは大きい。社内でも当初は「リストラの一環なのでは」と警戒された。しかし谷田社長は「人員削減の手段では決してない。もしそうなら、こんなに面倒な制度設計はしない」と語る。

「中の人」のフリーランス宣言はネットで話題に=ツイッターの画面から

入社10年目で独立を決めた公式ツイッターの「中の人」も「いきなりフリーランスになるのだったら、手は挙げなかったです」と話す。ある程度、安定的な仕事と収入を確保できるという安心感があったからこそ、一歩を踏み出せた。

「働き方が自由になると、もっと新しいことに挑戦するチャンスが増える。そうなればこの先何があっても生きていけるスキルを身につけられると思ったんです。会社員でなくなるのは不安じゃないかと言われますが、逆にスキルさえ身につけられれば、不安はなくなると考えました」(中の人)

個人事業主になれば、働く場所や時間の制約はなくなる。24時間をどう使うかは当人次第。法律上も、業務委託契約において、発注者である会社が、出退勤や勤務時間の管理を行うことは禁じられている。現在の活性化プロジェクトメンバーの間でも、従来通りの時間に出勤して働く人もいれば、社外での労働時間を増やした人もいる。トータルの労働時間も増えた人、減った人さまざまだ。

社員時代をベースに「業務委託契約」

独立にあたっては、個人事業主としてどんな業務を請け負うのか、また報酬額をいくらにするのかを記載した「業務委託契約書」を取り交わす。

業務委託契約書は欧米型の「職務記述書」(ジョブディスクリプション)に近いものだ。日本企業にはなじみが薄いが、欧米ではあらかじめ職務の内容や範囲、求められるスキルや資格、勤務地などを詳細に記述した「職務記述書」を作成し、その職務を遂行できると判断した人を雇う「ジョブ型雇用」が一般的。給与も職務記述書をもとに決定し、評価も記載された職務を遂行できたかどうかで判断する。

一方、タニタは他の多くの日本企業と同様、メンバーシップ型の雇用形態をとっていた。メンバーシップ型雇用とは、終身雇用を前提にした雇用形態で、職務や勤務地を限定せずに一括採用し、社内でさまざまな仕事やポストを経験させるもの。職務が明確でないため評価基準も曖昧で、給与は年功序列が基本となっている。このため、今回の取り組みでは、業務内容の定義や報酬額の算出にはかなり頭を悩ませたという。

結果として同社は、原則として独立直前の社員時代に行っていた業務を「基本業務」、その枠に収まらない仕事を「追加業務」と定義した。

報酬は「基本業務」に対する「基本報酬」(固定)と「追加業務」に対する「成果報酬」(変動)があり、基本報酬は、社員時代の給与・賞与がベースとなる。

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