やる気引き出す工夫、グローバル経営に生きるTDK 石黒成直社長(下)

「グローバルで共通した人事制度も策定しています。様々な企業を買収し、多様化が進むにつれて異なる組織間のコミュニケーションやリソースの把握が課題になっています。さらに次世代リーダーの発掘・育成に向けた仕組みづくりなどを進めています」

「例えばTDKグループの将来のリーダー候補として世界中から才能がある人材を発掘して、幅広い分野で活躍できるように育成しています。世界の4地域からそれぞれ数十人の人材を選抜し、9カ月間のグループワークでリーダーシップのスキルや企業経営の基礎知識を学んだり、従業員同士の交流を深めしたりします。若手が責任感を持って生き生きとリーダーを務めている姿を見かけるようになっています」

ものづくりの原点に立ち返って底上げしていきたい

――グローバル化による課題はありませんか。

「ものづくりの中心が海外に移ってしまっている面も否めません。日本のものづくりを大切にしてもう一度テコ入れしたいという思いから、TDKのものづくりを日本で体系化する会議『がりっと日本ものづくり会議』も始めました。創業の地である秋田県に敬意を表して、秋田弁で『一生懸命』『しっかり』を意味する『がりっと』という言葉を取り入れました」

「要はものづくりのノウハウなどを体系立てて後世に伝えていく取り組みです。今後、自動車や医療機器など人の安全や命に関わる機器で、電子部品の需要がますます増えていきます。人の安全を守るため、ものづくりの原点に立ち返って底上げしていきたいと考えています」

「派手さはないですが、中身を着実に固めて盤石にするために社長に任命されたのだと思います」と語る。「自由な議論と着実な改革で社内が活発化しているように感じます」と自負する

――刺激を受ける人、尊敬する人はいますか。

「私の周囲にも大勢います。グループにも優れた人がいるので『サポートしたい』と思いますね。もちろん顧客にも『そんなことができるの』と鳥肌が立つような発想力を持った方がいます。車載機器メーカーのある顧客は『どうやったらあなたの部品を壊せますか』といきなり聞いてきたことがある。人の命や安全に対する責任感を真剣に感じているからこそ出せる質問です。そんな人たちに囲まれているからこそ、人の話に謙虚に耳を傾ける必要性を感じます」

――次世代のリーダーに求める条件は何でしょうか。

「バックグラウンド、国籍にはこだわりません。目を輝かせて挑戦できる、常に先に進めるベンチャー精神を持った人です。変化を恐れてはダメで、現状に満足しない人がいいですね。そうでなければ今のポジションすら守れません。変化は手段です。世の中に役立つにはどうしたらよいか、先が見えないなかででもアンテナを張り巡らせ、正しい道を模索してほしいです」

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石黒成直
1957年(昭32年)生まれ。81年北海道大学理学部中退、82年東京電気化学工業(現TDK)入社。32歳でルクセンブルクに赴任、磁気テープ工場の立ち上げから運営まで携わる。2004年から主力事業のHDDヘッド事業で生産管理を担当。14年執行役員、15年磁気ヘッド&センサビジネスカンパニー最高経営責任者(CEO)、16年から現職。

(佐藤雅哉)

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