謎の古代人類 デニソワ人の骨格をDNAから復元

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/10/7
ナショナルジオグラフィック日本版

謎に包まれたデニソワ人の想像図。最新研究によると、狭い額やがっしりした顎など、デニソワ人は多くの点でネアンデルタール人に似ていたようだ(ILLUSTRATION BY MAAYAN HAREL)

謎の多い古代人類「デニソワ人」の骨格を再構築することに研究者が初めて成功、2019年9月19日付けの科学誌『セル』に発表された。

デニソワ人は数万年にわたりアジアに暮らしていたと考えられているが、その化石は、小指の骨と頭蓋骨の破片、割れた顎骨、数本の歯しか見つかっていない。

この謎の人類の骨格を浮かび上がらせるため、今回の論文を執筆したデビッド・ゴクマン氏は最も説得力ある証拠を利用した。DNAだ。

イスラエル、エルサレム・ヘブライ大学の博士課程学生だったゴクマン氏らは、デニソワ人の小指の骨から抽出したDNAを調べて骨格に関する32の特徴を抽出、デニソワ人の骨格を提案するという快挙を成し遂げた。

「科学が夢の国を見せてくれた」

この研究は、デニソワ人のプロポーションについて具体的な数値を与えるものではないものの、現生人類(ホモ・サピエンス)やネアンデルタール人と比較したときにデニソワ人がどのように見えるかを示している。

「このような手法で過去を再現できるのはすばらしいことです。科学が夢の国を見せてくれました」と、スペイン国立人類進化研究センターのマリア・マルティノン=トレス所長は喜ぶ。

ナショナル ジオグラフィック協会も助成している今回の研究は、新たなデニソワ人化石発見につながるヒントも与えてくれる。科学者たちはここ数年、ヒト族の系統樹にうまく当てはまらない化石をアジア全域で多数発見している。しかし、比較に使えるデニソワ人の骨がほとんどなく、温暖なアジアの化石からDNAを抽出できる可能性も低いため、こうした化石の多くが「旧人」という曖昧な分類の中でくすぶっている。

新たに提案された特徴は、こうした化石を同定するのに役立つかもしれない。今回の研究はすでに、中国河南省の許昌市近郊で発見された2点の頭蓋骨の破片がデニソワ人のものである可能性を示唆している。

この研究は「人間とは何か」という大きな問いにも関わると、研究チームを率いたエルサレム・ヘブライ大学のリラン・カーメル氏は説明する。かつて地球上には多様な種類のヒト族がいたのに、生き残ったのはホモ・サピエンスだけだった。その理由は誰も知らない。

「今回の研究は、この疑問に答えるための大きな一歩です」とカーメル氏は言う。

85%の精度で予想

デニソワ人の存在が最初に報告されたのは2010年のこと。シベリアのアルタイ山脈のデニソワ洞窟から出土した1本の小指の骨と1本の大きな歯から抽出されたDNAが決め手となった。

「DNAのみに基づいて新種の人類が発見されたのは、科学の歴史上初めてでした」とカーメル氏は言う。「新種と同定されたものの、その姿は謎に包まれていました」

その後の遺伝学的研究から、デニソワ人の姿が徐々に見えてきた。デニソワ人は少なくとも40万年前にはネアンデルタール人から分岐していて、ネアンデルタール人がヨーロッパと中東に定着したのに対し、デニソワ人は東に進んでアジアまで来た。途中、デニソワ人は現生人類の祖先と交雑し、その遺伝子の特徴は今でもアジア系集団に残っている。

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