
また、「ワインのことをまるで知らず先入観がなかったことや好奇心旺盛な性格がワイン造りに影響していると思う」と話す。彼女は受賞の喜びを分かち合いたいと、ワインを持って帰郷。育ててくれた祖母に差し出した。「祖母は『おいしいわね』と言ってくれたけど、飲み慣れてないお酒ですから、実際には『ひどい味』と思ったでしょう。でも、その顔には誇りが刻まれていました」
13年には、ステレカヤで働く一方で、大学在学時から夢見ていた自身の会社を設立。米国の女性醸造家と共同でブレンドワインを手掛けた。また同年、フランスでもワイン造りのコンサルティングを行うなど、醸造家としてビエラさんは一気に世界の注目を集めていく。30代半ばのことだ。
そして、15年にはステレカヤを退社し、自身のワインブランド「アスリナ」に専念することになる。「アスリナ」とは、ビエラさんの祖母の名前だ。同ブランドのワインは順調に生産数を伸ばし、今年は2万2000本をリリースする予定という。
ビエラさんは、「ブドウ自体のよさが素直に表れた、自然を映したワイン」造りを心がけている。柔らかなタンニンと果実の味わいが広がる酒だ。「私が造るワインは、自分自身が楽しめるもの。ワインへの愛情と敬意が製品に反映しているんです」

「アスリナ」ブランドのワインは4種類。赤ワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンとボルドースタイルのブレンドである「ウムササネ」(ビエラさんの祖母のニックネームでアカシアの木の意味)、白ワインはシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランの2種だ。「白ワインは、すしにとてもよく合います。ソフトでエレガントな果実の味わいが、和食に合うのです」と彼女は薦める。一方、赤ワインは南アフリカでよく食べるオックステールやラムのシチューに抜群に合うそう。
現在、「アスリナ」はほかのワイナリーの設備を借りて生産をしているが、近い将来自身のワイナリーを立ち上げたいと、ビエラさんは新たな目標を定める。「そうすれば、テイスティングルームも設けられるでしょう?」。また、後進の育成にも熱心に取り組む。目標を必ずモノにしてきた彼女は次のステージに向け、大きく羽ばたこうとしている。
(フリーライター メレンダ千春)