2019/9/29

チェンジメーカーの育て方

小林氏は「何に対しても『むかついた』としか言えない人と、その感情をいろいろな言葉で表現できる人では、後者の方がはるかに自制が利くことがわかっています。自分の感情を理解し、悲劇的とも思える状況を分析する。その中から楽観できる材料を探し、前向きな行動につなげていく。これは実践を重ねることで培える能力だと捉えています」と強調する。

すべての生徒が参加するUWC ISAKの課外活動「アウトドア」も、困難に挑む力を鍛える経験になるようだ。生徒は地図とコンパスを頼りに榛名山や八ケ岳など、それぞれのレベルに合った山に登る。小林氏は「アウトドアでは、天候の急変や予期せぬ体調の変化、仲間の忘れ物など、さまざまなハプニングが待ち受けています。人間の力ではどうにもできない要素も多いでしょう」と話し、ある生徒のエピソードを紹介する。

アウトドア活動で心身を鍛える

ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンの小林りん代表理事は、過酷なアウトドア経験の効用を説く

難しい山に登っている最中、雨に見舞われた生徒は「もうやめたい」と思いながらも、「なぜそう思うのか」と自問した。「靴の中までぬれて気持ち悪い」「重い荷物が肩にのしかかる」などと頭には次々不満が浮かんだが、分析してみれば「足元は気持ち悪いが、靴が使えなくなったわけではない」「荷物は朝と同じもので重いのは疲れてきたからだ。しかも食べた弁当の分、軽くなったはずだ」と見方を変えられた。すると止まりかけた足が、また前に出るようになったという。

小林氏は「この生徒は、不可能と思えることも精神面のコントロールで可能になる場合があると実体験で理解したのです」と話す。仲間とともに全行程を踏破し、強い達成感を味わった生徒は、進級すると今度は下級生にこの考え方を伝えた。小林氏は「体験を人に伝えることで、他の人の困難な状況もコントロールできるものに変えていく。これはリーダーやチェンジメーカーに欠かせないスキルです」と指摘する。

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成功と失敗を分けるのは「前を向く」かどうか